DHA ・EPAを多く含むのは、マグロ(特にトロと呼ばれる、脂身の多い部分)、サンマ、ブリ、サバなどの魚です(下図)。トロは高価なので頻繁に食べるのは難しいかもしれませんが、その他の魚は日常的に取り入れやすいものが多いです。DHA ・EPAを含むこれらの食材を積極的にとれば、抗酸化作用・抗炎症作用とともに、脳細胞の膜を柔らかくして瞬発力をキープし、脳の機能が衰えるのを防ぐことが期待できます。
DHA・EPAを多く含む食品(可食部100g中の含有量)

また、DHA・EPA以外の不飽和脂肪酸として、オリーブオイルに代表されるオレイン酸もお勧めだと、阿部さんは言います。
脂肪酸は炭素・水素・酸素が鎖のように連なる構造をしていて、炭素と炭素が手をつなぐところに「二重結合」という分子構造があるものを不飽和脂肪酸といいます。DHA ・EPAとオレイン酸は、この二重結合を持つという構造的な共通点があります。
「二重結合を1つ持つ一価不飽和脂肪酸が、オリーブオイルなどのオレイン酸。二重結合をたくさん持つのが、DHA ・EPAに代表される多価不飽和脂肪酸です。活性酸素は二重結合の部分に反応するので、二重結合が多いほど抗酸化力が高いと考えられ、細胞膜の柔らかさを保つためにも必要なので積極的にとってほしいと思います」(阿部さん)
ただし、不飽和脂肪酸は酸化を抑える効果を持ちながら、自身は酸化に弱いという性質があります。前述した通り、活性酸素は二重結合の部分に反応しますが、そうして自身が酸化されることで、私たちの体を酸化から守ってくれるのです。「二重結合が多い物質ほど酸化ストレスの攻撃を受けやすい」と阿部さんは話します。さらに、「抗酸化力が高いものは、それ自体の酸化が早いことが多いので、鮮度がいいうちに食べてください」(阿部さん)と注意を促しています。
[日経Gooday2022年4月11日付記事を再構成]