ワイン界で日本人女性醸造家台頭 実力も折り紙付きエンジョイ・ワイン(51)

Kisvin Wineryで醸造責任者を務める斎藤まゆさん

ワイン業界で日本人女性醸造家の台頭が目立っている。醸造家になった経緯は様々だが、共通するのは、実力がものを言う世界で彼女たちの造るワインが専門家や消費者から高い評価を得ている点だ。彼女たちおすすめの1本と合わせご紹介しよう。

甲州種から造った辛口白ワイン「Kisvin Koshu 2021」

トップバッターは山梨県甲州市のKisvin Winery(キスヴィンワイナリー)で醸造責任者を務める斎藤まゆさん。何ともユニークな経歴の持ち主だ。いったんはお笑い芸人を目指し、早稲田大学に入学したが、旅先のフランスでのブドウの収穫体験が忘れられず、醸造家になることを決意。早大を中退し、米カリフォルニア州の大学で醸造学を修めた。その後、米国やフランスで栽培・醸造の経験を積み、9年前、Kisvin の立ち上げに際し、醸造責任者として採用された。

斎藤さんが造るワインは、早くから高い評価を得ていた。ワイン界のレジェンドとも呼ばれたソムリエの故ジェラール・バッセ氏が2017年に来日した際も、「才能豊かな醸造家が造ったこのワインはユニークでセンセーショナル」とツイッターでつぶやいたほど。「ワイン造りで一番重要なのは心と体の柔軟性」と語る斎藤さんは、「10年足らずで自分が想像した以上の成果を出せている。今後はいろいろな人生経験を積みながら醸造家として円熟味を出していきたい」と抱負を述べる。

そんな斎藤さんがすすめる1本が、甲州種から造った辛口白ワイン「Kisvin Koshu 2021」(オープン価格。店頭価格は税込み3000円程度)。果実味豊かで、心地よい口当たりだ。

ワイナリー大手メルシャンの丹澤史子さんは昨年、シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー(山梨県甲州市)の「仕込み統括」に就任した。仕込み統括とは、ブドウの収穫から発酵、ワインの味を決めるブレンディング、瓶詰め作業までを文字通り統括する役割で、一般的なワイナリーの醸造責任者にあたる。女性の仕込み統括はシャトー・メルシャン始まって以来、初めて。

シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー(山梨県甲州市)「仕込み統括」の丹澤史子さん

北海道大学農学院(大学院)を出てメルシャンに就職後、商品開発研究所や、主に輸入ブドウからワインを造っている藤沢工場(神奈川県藤沢市)の品質管理課に勤務。自ら希望してフランスに留学し、栽培・醸造の知識を深めた。「フランスでは女性醸造家は珍しくなく、留学先の農業学校の先生も女性が多かった。栽培指導の先生も私より小柄な女性だったが、力仕事をこなすのを見て励みになった」と語る。

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海外で活躍する女性も増加