遠藤舞憂子(えんどう・まゆこ)さん(44歳)
花王株式会社 化粧品事業部門 マステージビジネスグループ KATE
「コロナ禍で口紅は売れない」をはねのけ、
SNSで話題騒然の爆売れリップを開発

遠藤さんは2001年にカネボウ化粧品(現・花王)に入社して以来、一貫して化粧品開発を担当。2019年にコスメブランドKATE(ケイト)の開発チームのリーダーとなり、2021年5月に発売した口紅、「リップモンスター」を手がけた。「モンスターの棲む世界」を意識し、チームメンバーとともに、「2:00AM」「ラスボス」「欲望の塊」などユニークなネーミングを考案。落ちにくさとツヤ、潤いを両立した機能性も相まって、発売以来、累計出荷本数 550 万本以上の大ヒット商品に。SNSでのバズらせ戦略も功を奏し、いまだに入手困難な状態が続いている。「コロナ禍で口紅は売れない」という常識を見事に覆した。
竹下真由(たけした・まゆ)さん(41歳)
竹下製菓株式会社 代表取締役社長
「ブラックモンブラン」の製菓会社を事業承継。
M&Aなどの多角化経営で売上200%超に

発売から53年、九州を中心に根強いファンを持つアイスバー「ブラックモンブラン」を手がける佐賀の竹下製菓を6年前に事業承継。10代の頃に「私が継ぐ」と決め、大学では経営工学を学び、新卒でアクセンチュアに入社。コンサルタント経験を生かして組織・業務改革を推進、地方企業のM&Aを積極的に行うなどして、社長就任前と比較するとグループ全体の売り上げは200%超に。年間数千万円に及んだ廃棄ロスも、原料見直しや包材開発で3分の1まで抑え込んだ。また、父から受け継いだホテル経営も、2022年春に2棟目を大分県の別府駅前に開業。着実に事業を拡大させている。
近本あゆみ(ちかもと・あゆみ)さん(38歳)
株式会社ICHIGO 代表取締役CEO
「お菓子のサブスク」の越境ECを展開し、起業6年目で年商40億円に成長。
世界180の国と地域に日本の菓子や文化の魅力を発信

2015年から海外向けに日本のお菓子を詰め込んだボックスをサブスクリプション(定額課金)で販売するサービスを開始。コロナ禍で国際配送がストップ、梱包材の値上げなど逆境もあったが、粘り強い交渉力で乗り切った。世界180の国と地域に日本のお菓子やキャラクターグッズを届け、起業6年目で年商40億円に。2021年にスタートした和菓子や和雑貨を詰めた「Sakuraco」では、京都や沖縄など地域の商品を詰め合わせて販売。コロナ禍でインバウンド消費が激減して苦しむ地方の菓子メーカーの新たな海外販路創出をサポート。ガイドブックとして封入する冊子には文化や和菓子の解説も詰め、日本の魅力を世界に発信する架け橋になっている。
藤原麻里菜(ふじわら・まりな)さん(29歳)
株式会社無駄 代表取締役 コンテンツクリエイター、文筆家
人の心を豊かにする「無駄づくり」活動を展開。
新しい価値観を生み出し、独自のキャリアを形成

独創的なものづくりが人気のクリエイター。「無駄づくり」と題して作った作品を、You TubeやツイッターなどのSNSで発信し続ける。これまでに制作した作品は「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」「水がびしゃびしゃになるよう計算されたスプーン」「インスタ映え台無しマシーン」など200点以上で、台湾など国内外での展示会や、企業コラボの作品も世の中から高い評価を得ている。無駄づくりの理由を「無駄をあえて生み出すことで心の余白が変わってくる」と語る。コロナ禍で不要不急の行動が戒められ、「無駄」が排除されがちな時代に、社会の役に立たないと思われている「無駄なもの」をブレることなくつくり続け、独自のキャリアを築いた姿勢は多くの人々にインパクトを与えている。
山本理恵(やまもと・りえ)さん(34歳)
株式会社EventHub 代表取締役CEO
受注ゼロからオンラインサービスにいち早く転換。
累計60万人が使用するイベントシステムで人をつなげ、世界を近づける

参加者同士のつながりが生まれにくい日本のイベント業界に商機があると考え、2016年にリアルイベント支援サービスの会社を起業。しかし事業が軌道に乗り始めたころに、コロナ禍で受注がゼロに。そこでいち早くオンラインイベントシステムに転換したことで受注が大きく伸び、官公庁や企業、学会など幅広いジャンルで累計60万人が使用するBtoB支援ツールに成長させた。アメリカで生まれ育ち、日本のビジネス作法に慣れずつらい思いをしたこともあるが、異文化をリスペクトする姿勢が育まれたことで、アメリカで浸透していたオンラインイベントや参加者がつながりやすいイベント支援ツールが日本でも成功すると確信。逆境を商機に転換させた。
渡部カンコロンゴ清花(わたなべ・かんころんご・さやか)さん(31歳)
NPO法人WELgee 代表理事
難民認定待ちの来日難民を「グローバル人材」として就労支援。
ウクライナ避難民支援でも注目の社会起業家に

日本の難民認定率は1%程度と極めて低いなか、日本に来た難民申請者を、支援が必要な「弱者」ではなく、祖国で培ったスキルや経験、情熱に光を当てる「グローバル人材」として捉え直し、日本企業への就労をサポートする事業を展開。発想の転換で、長期の在留資格を獲得するという新しい支援の形を構築した。日本企業にとっても、難民申請者が持つスキルや経験を生かした就労支援の実績は、ビジネスの成長にもつながることを証明。大手企業との協働事例も増加している。2022年はウクライナ避難民の来日で、企業からの問い合わせやメディア出演、講演依頼が一気に増加し、社会起業家として注目されている。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」は、(1)働く女性のロールモデルを提示する、(2)組織や社会の中に埋もれがちな個人の業績に光を当てる、(3)活躍した女性たちを通して時代の変化の矛先をとらえる、という主旨のもと、1999年から毎年実施しているアワードで、本年が24回目となります。『日経WOMAN』は、1988年の創刊以来、「働く女性」をバックアップしてきました。今後も「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を通じ、社会で活躍する女性を表彰することで、時代を担う女性たちを応援していきたいと考えています。なお2022年12月7日発売の『日経WOMAN』2023年1月号では、受賞者紹介と審査結果の詳細を掲載いたします。

・相内優香さん(テレビ東京 総合編成局アナウンス部)
・入山章栄さん(早稲田大学ビジネススクール 教授)
・関 美和さん(MPower Partners ゼネラル・パートナー)
・村上 臣さん(武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員)
●審査方法
以下4つの評価基準で採点、審査員4人と編集部の総合得点で決定。
(1)新規性 着眼点の新しさ。イノベーションを起こし、新しい価値観を提示・実現したか。
(2)成功度 今年のビジネスの業績。社会への貢献度。
(3)社会へのインパクト 社会に多くの影響を与え、その発展・改革につなげたか。人々の心を豊かにしたか。
(4)ロールモデル性 自ら切り開いたキャリアの道筋が、読者にとってモデルとなるか。