2022/11/25

最新の情報はネットより自治体から 

――保活をしている人にアドバイスはありますか。

普光院 認可の利用を希望するなら、一番新しい情報が得られるのはネットの情報よりも自治体です。もっとも、同じ自治体の中でも保育は地域差が大きいです。住まいのある市や区で「0歳児クラスに空きがある」などと聞くと、誰でも認可を利用できると思いがち。けれど、あなたの地域でもそうとは限りません。だから、自分の地域はどうなっているかを理解することが、ものすごく重要になります。

どの自治体も、個別の保育所の空き状況などについて発表しています。園別や(年齢による)クラス別のデータを確認することが大事です。

できれば、関心のある保育所について、入園を希望する前の年の5月1日時点の定員がどうであったか確認してみてください。(年度替わりでどの年齢のクラスも児童が入れ替わる)4月入園の選考が終わった直後の状況が分かるからです。仮に1人でも、5月1日時点で空きがあったなら、引っ越しによる退園など特別な例でもない限り、前の月となる4月の入園は全入だった可能性が高いでしょう。公表データがない場合も、「この園の1歳児クラスは4月1日で埋まりましたか」など具体的に聞いてみると、地域のリアルな状況がある程度分かると思います。

――保育所を選ぶ際のポイントは。

「保育園を考える親の会」の前代表でアドバイザーの普光院亜紀氏。『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)など著書多数

普光院 まずは立地や保育時間などの条件から、ニーズに合うところをリストアップしましょう。そのうえで、どんな保育をしているか調べます。いまはコロナ禍で見学ができないケースもあるようです。ただ、そうした場合も説明会を開くなど、情報提供の機会はなんらかあると思います。電話で問い合わせをした際の対応でも、分かることがあるはずです。保護者の心情への理解は1つのポイントになると思います。

見学ができる場合は、ぜひ実際に足を運び、園長や保育士と会話をしてみてください。「抱っこをしないと昼寝をしない」といった、園生活とかかわるような育児の悩みを尋ねてみてもいいでしょう。

正解はありませんが、「『○カ月の子どもはこうですよ』と成長を踏まえたアドバイスがもらえた」など戻ってきた答えから、子どもを大事にした保育がなされているかどうか素人でも分かるはずです。防災対策をはじめ安全な施設であることなどハード面も確かに大事です。ただし、そこだけにとらわれず、実際の保育を見学できる場合は、子どもと保育士との関係をぜひ見てほしいと思います。

認可保育所の園庭保有率、都内では20%未満の区も

――コロナ禍によるテレワークの普及もあり、ヤフーやNTTなど大企業を中心に国内の好きな場所で働ける制度が広がりつつあります。在宅勤務中も保育の利用は認められるとあって、子育て環境から住まいを選ぶことも夢ではなくなってきました。22年度版で指摘した、認可保育所の園庭を巡る地域差拡大について教えてください。

普光院 私たちは100市区それぞれについて、認可保育所(分園も含む)のうち、国の基準を満たす園庭(屋外遊技場)を保有する園の数を調べています。これを当該市区内の認可保育所の総園数で割ったものを「園庭保有率」としています。

22年度版の園庭保有率は100市区の平均で68.9%と初めて70%を切りました。浜松市や神戸市、北九州市、熊本市では100%となり、郊外や地方都市では9割前後の自治体も多いです。しかし、認可保育所が急増した地域では園庭保有率が急低下しています。東京23区では、17年度の園庭保有率は3割前後だった千代田区、中央区が22年度は2割未満に低下し、文京区、港区も2割未満です。17年度は7割を超えていた渋谷区も22年度は5割を切りました。

子どもは2歳ごろから体の動きが活発になります。体を動かしながら心身の能力を育んでいくので外遊びの機会は大切です。園庭がない場合は、公園で代替することが認められていますが、都心部では1つの公園に複数の園の利用が重なり、思うように外遊びができないケースも。子どもたちの育ちに与える影響を懸念しています。

もっとも、園庭保有率が低下していた自治体が新設園を園庭付きでつくって、いったん下がった園庭保有率を上昇させたり低下を止めたりしているケースもあります。園庭の必要性が再認識されたのではないでしょうか。こうした動きが広がることを期待します。

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量の整備から質の改善へ 求めたい「保育のゆとり」