
前回(「お酒と口内環境の関係 よく飲む人は歯が抜けやすい?」)、日常的な大量飲酒は口内環境を悪化させ、虫歯や歯周病を招きやすい、という話を久里浜医療センター歯科医長の井上裕之氏から聞いた。
アルコールによる脱水作用が口内環境を悪化させやすく、また酔っぱらうと歯磨きが不十分になることなどが原因だと考えられる。また、糖分たっぷりの酒も歯に悪影響を及ぼすという。

筆者の周囲の大酒飲みを思い浮かべてみると、口腔環境が悪い人が結構な数でおり、歯周病から歯を失っている人もいる。改めて自分の酒の飲み方を考え直さねばと思った。
さらに恐ろしいことに、「歯周病の影響は、口腔環境だけではなく全身に至る」と井上氏は言う。
自分は虫歯になりやすいと思っていたため、虫歯の対策については気をつけていたが、歯周病の対策が十分かどうか不安になってきた。
そこで、井上氏に、歯周病についてさらに深掘りして聞いていくとともに、歯周病のリスクを高めない酒の飲み方についても解説してもらった。
歯周病菌が糖尿病や認知症のリスクにも影響!?
先生、歯周病が口腔環境だけでなく、体全体に影響を及ぼすというのは、いったいどういうことなのでしょうか?
「歯周病は、『歯周病菌』の感染によって引き起こされる炎症性の感染症です。昨今の研究によって、歯周病菌は、口内環境だけでなく全身に影響を及ぼし、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、そして認知症といった病気にも密接に関わっていることが明らかになってきました」(井上氏)
歯周病によって歯を失う危険性があるだけでなく、心筋梗塞や糖尿病のリスクにもつながるなんて……。歯周病菌は、どうやって体に悪さをするのだろうか。
「歯周病によって歯肉が傷つくと、歯周ポケット内がただれた状態になり、毛細血管がむきだしになります。これによって、血管を通して歯周病菌が全身へと回ってしまいます。歯周病菌は血液の成分であるたんぱく質や鉄分を好むため、血管内に定着しやすいのです。また、歯周病菌を食事の際などに飲み込み、それによって全身へ菌が回ってしまうルートもあります」(井上氏)
歯周病のメカニズム
