
名うての作り手ばかりの実力店
◎中華そばたがや(京成幕張)
~実力店で培ったラーメン作りのノウハウを結集! 手羽元の滋味が息づく名杯~
お次は今年7月、千葉市の京成幕張駅から徒歩5分弱の好立地にオープンした『中華そば たがや』。同店を切り盛りするのは森猛店主ほか、千葉県内の実力店で研さんを重ねた名うての作り手ばかりである。

店主は2009年、25歳の時、当時常連として通い詰めていた千葉市内の実力店(『屋台拉麺一‘s(ラーメンいちず)』)の味にほれ込み、ラーメン職人として同店での修業を開始。18年まで同店で腕を磨き、しばらくのブランクを経て今般、一国一城の主となった努力の人。
「私は幕張生まれの幕張育ちで、地元に愛着があります。なので、どのような形であっても、街を活性化させたいと思ったのです。『たがや』をオープンしたのも、ここが街のパワースポットになればという一心からです」
「中華そば(醤油)」も提供するが、「中華そば(塩)」がメニューリストの筆頭を飾る。スープは、丸鶏・手羽元・ガラ等の鶏(特に手羽元)をたっぷり用いた動物系オンリー。「鶏に加え、華やかな風味を演出するため、少量ですが牛骨も用いています。修業元が牛を利かせた1杯を提供しており、その名残ですかね」と笑う。
スープに添える液状油にはサバ・カツオ・煮干し等の魚介素材を配し、動物系とクロスオーバーさせることで「重層的なうま味」を演出。その工夫は特筆に値する。
こうして出来上がった1杯は、動物系の重厚なコクと魚介の華やかなうま味とが、一体となって味蕾へと迫る会心の出来栄え。レンゲを持つ手を止められない引きの強さを持ち合わせる。スープに合わせる『麺屋棣鄂(ていがく)』(京都市)製全粒粉麵の香りも麗しく、啜り心地も申し分ない。
ラーメンというコンテンツは、外から人を呼び込むための絶好のツール。この『たがや』の存在が、幕張の街に更なる光をともす起爆剤となればと、私も切に願う次第である。
(ラーメン官僚 田中一明)
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。