
偉大なマエストロが割拠するナポリの中でも、パニコは別格。そう評価するスーツ好きは実に多い。青山で自らのサルトリアを営む小山 毅氏は、パニコに傾倒するあまり自らサルトになる道を選んだ。まさに人生を変えるスーツ、その神髄はどこにあるのだろうか?
■SARTORIA PANICO(サルトリア パニコ)
ナポリ仕立ての帝王と称されるアントニオ・パニコ氏が率いるサルトリア パニコ。現在は三越伊勢丹で常時メイド トゥ メジャーを受け付けている。たっぷりとギャザーを寄せた雨降らし袖、首へ吸い付くようにノボる上襟、腰回りを包み込むような裾のカッティングなど、クラシックの王道的魅力が薫る。104万5000円~〈オーダー価格〉/(日本橋三越本店)


1970年生まれ。ビームス、パニコの東京店、ルビナッチの東京店、タイ ユア タイでキャリアを積み、2010年にサルトリア ヤマッチを開業。ナポリ仕立てのぬくもりを愛し、不完全の美しさを追求している。近年はビスポーク・カジュアルウエアにも注力。
“初めて目にしたときの衝撃は私の人生を変えるほどでした”
遡ること、およそ20年前。当時ビームスに勤務していた小山 毅さんは、興奮で声がうわずったバイヤーからの電話を受けていた。
「今、パニコのサンプルがナポリから届いた。こりゃあスゴイぞ!」
小山氏の担当は店舗での販売。部署違いのバイヤーから直電がかかってくることなどまずないのだが、当時から生粋のクラシック服好きとして社内でも有名だっただけに、バイヤーも思わず電話してしまったのだろう。そしてほどなく、そのサンプルを目にした小山氏もまた、グラグラと頭を揺さぶられるような衝撃を受けたという。
「当時、自分が考えていたクラシック・テーラリングの常識が一蹴されましたね。アットリーニなど手縫いの最高峰スーツには触れていましたが、パニコのオーラは別格でした。ファッションシーンに一切迎合しない“オッサンの服”なんですけど、それが衝撃的に格好よかった。サルトリアの服というのはこういうものなんだ、と痛感しましたね。そして何故か“自分もこんなスーツを作りたい”と強く思いました。私の人生はパニコによって決定づけられたといっても過言ではありません」
小山さん愛用のパニコスーツ
右はビームスがパニコのスミズーラ会を開催していた'90年代にオーダーした小山氏のファースト・パニコ。左は初めてナポリのアトリエを訪ねた際にパニコのストックから選んだヴィンテージ生地で仕立てた一着だ。


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