官僚幹部の女性登用、前進も道半ば 長時間労働改善を

2021/11/23

各中央省庁が発表した今夏の幹部人事で、農林水産省の事務方ナンバー2の次官級ポストに初めて女性が就いた。人事院では2代連続で女性の新総裁が誕生した。女性幹部職員は過去最多となり、女性登用は一歩進んだかに見える。だが長時間労働の是正など職場環境の課題は残る。最前線で活躍する女性たちに課題や改善策を聞き、今後の道筋を探った。

女性幹部、過去最多の39人 だが目標には遠く

「より職責の高いポストへの女性登用を進めている」。9月、加藤勝信官房長官(当時)は記者会見で、中央省庁の女性幹部職員が過去最多の39人になったと明らかにし、そう強調した。

今夏の人事では、農林水産審議官に就任した新井ゆたか氏や人事院新総裁の川本裕子氏らが幹部人事の目玉となった。新井氏は同省で女性として初めて次官級ポストに就任。川本氏は女性初の総裁だった一宮なほみ氏に続いた。

一歩進んだかに見える中央省庁の女性登用。だが目標には遠い。政府は昨年、2025年度末までに事務方トップの事務次官や局長ら「指定職」に占める女性の割合を8%に、課長や室長級は10%に増やすことを掲げた。だが内閣府によると、20年7月時点で指定職の女性比率は4.4%。課長や室長級職員の女性比率も5.9%にとどまる。

多様な働き方の要望をくみ取れる組織に 農水省・新井氏

背景には、男性中心に採用を進め、長時間労働を是とする働き方を続けてきた中央省庁の構造的な問題がある。

「定時に帰れると思っていたら緊急事態が発生して翌朝まで働いた、ということもあった」。農水省の新井氏はそう過去を振り返る。中央省庁は「皆が同じように働き、その人たちを組織として積み上げる『ようかん型』の仕組みになっている」と話す。

人事異動も多様な働き方を考慮しているとは言いがたい。新井氏は自身も出産を経て、働き続けてきた経験から「女性は、子育てなど『ライフ』に重きをおきたい時期と、『ワーク』に重点をおきたい時期の波がある」と話す。

現状では人事担当者が育児中の母親をひとくくりにし、楽なポストに配置しがちで「本人の意欲とのミスマッチが生まれる懸念がある」と言う。「表面が平らな『ようかん型』ではなく、でこぼことした『エクレア型』のような、多様な働き方の要望をくみ取れる組織に変わるべきだ」

働き方改革、業務効率化がカギ 人事院・川本氏

政府が女性登用を推し進める背景には「キャリア官僚」と呼ばれる国家公務員総合職の志望者が減少している側面もある。人事院が発表した21年度試験の申込者数は現行制度になった12年度以降で最少となった。もはや男性だけでは現場は回らない。

人事院の川本氏は働き方改革や業務の効率化の重要性を説く。「霞が関の長時間労働の問題は数十年にわたって指摘されてきた」と強調。複数企業で社外取締役を務めた経験などをもとに「中央省庁の業務の進め方は、オンライン化が進んでいるとは言い切れない。紙文化も少しずつ直していければ」と話す。

次のページ
仕事のやりがいに魅力を感じる若手も