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身につまされる映画

ジェーン・スー 働くアラサー・アラフォー女性なら身につまされる映画です。とにかく真面目で一生懸命な主人公に感情移入すること間違いなし。会社に散々振り回されるのですが、持ち前のガッツや機転を利かせて乗り越えていくんです。その姿を見て、明日も頑張ろうと思えてきます。

高橋 主人公のベッキーは朝のワイドショー番組のプロデューサーで、仕事柄毎日午前1時に起床する彼女は恋人を見つけようにも早めのランチデートをするほか手段がなくて。しかも、デート中も携帯が鳴りっぱなしだから気になる相手と親交を深めることすらままならない。

価値観の転換が見どころ

ジェーン・スー そういったハンディキャップがありながら、彼女は夢も恋もつかんでいく。どうでもいいときは服がいつもグズグズで、髪もボサボサなんですよ(笑)。働く女性のリアリティーがあっていいですね。仕事も恋愛も努力を重ねていく彼女ですが、最終的に何が彼女にとっての幸せなのか、価値観の転換があるところが見どころですね。

高橋 これは旧来型のプリンセスストーリーを覆した『アナと雪の女王』以降顕著になってきた傾向ですが、近年のラブコメでは必ずしも恋愛の成就がゴールではなくなりました。ヒロインが「白馬の王子様」を待望するような昔ながらのラブコメはほぼ消滅した印象です。

ジェーン・スー 今度は白馬の王子様がでてくる作品を紹介しましょう(笑)。『ニューヨークの恋人』です。これは働き過ぎて、疲れ果てた女性が見た夢だとも言える。私は幻覚だと思いながら観ました(笑)。

高橋 1876年、貴族のレオポルドは舞踏会で見かけた怪しげな男が気になり追いかけていくうちに21世紀のニューヨークにタイプスリップするというめちゃくちゃな映画です(笑)。そしてそのニューヨークの中心地マンハッタンで、キャリアウーマンと出会って恋に落ちる。そのキャリアウーマンを女優、メグ・ライアンが演じています。

ジェーン・スー ひったくりにあった主人公の女性を助けるために、本当に白馬に乗って王子様がやってくる(笑)。笑ってしまいますけど、あまりに仕事に疲れているとグッときちゃうんですよ。

高橋 かなり荒唐無稽な映画ですけど、ラブコメ好きにとってはこのレベルもぜんぜん許容範囲です(笑)。

10~20年前の作品がジーンとくる

ジェーン・スー 約20年前の映画ですが、10~20年前の米国のラブコメ映画のほうが、日本のアラサー・アラフォー女性にはグッとくるかもしれません。2020年代の米国のラブコメ映画は今の10~20代ぐらいの女子たちの価値観に合わせて作られていることが多く、ちょっとピンとこないかもしれません。

この作品はメグ・ライアンがとにかく忙しいんですよ。忙しいところに本当に都合のいい王子様がやってくる。あまりに荒唐無稽で、最後の終わり方も爆笑なんですよ。日常の嫌なことは忘れさせてくれますね。男女平等が叫ばれている世の中ですが、自分の中に「王子様願望」が名残としてあることを思い知らされて身につまされる人もいるかも。

「見たくもない尾てい骨を見るような作品です(笑)」(ジェーン・スーさん)

ジェーン・スー マンハッタンという超都会で説得力のあるロケーションも魅力の一つです。見ているだけで、都会で働く女みたいな気分にさせてくれるんです。

―― 物語だけではなく、映像も楽しむことができますね。

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「いい人なんだけど、将来性がない」