
店舗は京王電鉄京王線の終着駅・京王八王子駅から徒歩2分弱のマンションの1階にある。1号店も、京王八王子駅からじゅうぶん徒歩圏内に位置するが、同店のアクセスは、それに輪を掛けて良い。
外観は、高級感をそこはかとなく漂わせる建物と完全に一体化。掲げられた清潔感のある白い暖簾(のれん)は、目を凝らせば、屋号と楓のロゴが刻まれていることが分かる。ただ布地と同系色で刻まれているため、遠方からでは識別が難しく、何も描かれていないようにも見える。
予備知識がなければ、この店がラーメン店であることすら分からないだろう。押しつけがましさを全く感じさせない店構えに、作り手のセンスの良さが垣間見える。
店内に入ると左手に券売機が鎮座。現在、同店が提供する麺メニューは「紀州鴨中華そば」と「紀州鴨白湯つけめん」の2種類のみ。看板メニューは「紀州鴨中華そば」だ。
店内は、カウンター席は両隣、テーブル席は対面に寸分の隙なくアクリル板が設置されるなど、コロナ対策も万全。カウンター席の間隔は十分に確保され、ゆったりと食事を楽しむことができる。スタッフの女性の対応も丁寧だ。さりげない心遣いが、心地良い空間の演出にひと役買っている。
同店のラーメンは、店内の製麺室で打った自家製麺を採用。注文時に、「ストレート麺」と「手もみ麺」の2種類から選択できる。
今回、私は、手もみ麺をチョイスさせていただいた。「春よ恋生一本」「チクゴイズミ」「ライ麦」をブレンドし、提供する直前に丹念な手もみを施した、薫り高い太麺だ。
なお、同店では、小麦本来の風味を味わってもらうため、「麺硬め」等のオーダーは受け付けていない。最善の状態の1杯を食べ手に届けるために、食べ手のリクエストにさえ制限をかけているのだ。作り手の作品(ラーメン)に対する矜持(きょうじ)が、まざまざと伝わってきた。
同店の厨房を仕切るのは、店長である瀧谷慶二郎氏。麺のゆでなどを担当するスタッフとの呼吸もピタリと合い、流れるようにスムーズなオペレーション。思わず見ほれてしまいそうになるほど、無駄のない動きだ。