年末年始の読書で差をつける 2021年を振り返る9冊選書のプロが解説

情報工場のエディターである安藤奈々さん(写真左)と前田真織さん

仕事に役立つ発想のヒントを与えてくれる良書を月に6冊ずつ紹介する「ひらめきブックレビュー」。常日ごろ忙しいビジネスパーソンにとって、年末年始は絶好の読書の機会だ。そこで、選書のプロが2021年に取り上げた72冊のうち、年越しにぜひとも読み返してほしい本を9冊選んでお届けする。今年で3回目となるこの企画、今回も昨年に続き、書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」を運営する情報工場(東京・港)のエディターである安藤奈々さんと前田真織さんに、それぞれの本の読みどころを語ってもらった。

>>「年越しにオススメの9冊」一覧はこちら

 ◇    ◇    ◇

――今回の9冊をどのように選んだのですか。

安藤 ひらめきブックレビューでは、「ビジネス」「トレンド」「教養」という3つのジャンルで、新しい発想や気づきを得られる本を紹介しています。いわゆるベストセラーでなくとも、読書の醍醐味を感じてもらえるような選書を心がけています。今回もその3ジャンルの中から、21年らしさが浮かび上がるような本、いま読んで22年に備えたいと思う本を、2人で選びました。

――21年を振り返って見えてきたテーマは何ですか。

前田 新型コロナウイルスの感染拡大が続いたほか、10月に英国で開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも注目された気候変動問題、SDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・企業統治)への関心の高まりなど、社会問題が強く意識された1年だったように思います。夏には東京五輪・パラリンピックも開催されました。20年はコロナ一色という印象でしたが、21年はこうした社会問題を人々が「自分ごと」としてとらえ、対応策を考えようと、前向きな姿勢が感じられるような1年だったと思います。

安藤 そうですね。ひらめきブックレビューで人気の高かった本を振り返っても、個人のスキルを磨くためというよりは視点の高い、社会や組織、チームを良くするための本に関心が高まった印象です。

前田 年末年始は、すぐに役立つ本もいいのですが、少し視野を広げ、腰を据えてこうした本を読んでいただくのもいいかな、と思います。

リーダーシップとは何かを考える

――9冊の中でお二人がとくに読んでほしいと思う「推し本」はありますか。

安藤 私は、デボラ・グルーンフェルド著『スタンフォードの権力のレッスン』(御立英史訳)です。米スタンフォード大で人気の講座を書籍化したもので、リーダーシップのあり方を考えさせてくれる本です。権力、すなわち他者に対して影響力を発揮する正しい方法を身につけることで、自分や周囲にいる他者を導き、手助けできるのだと説きます。

権力というと、明らかに強い立場、トップリーダーのものと思いがちですが、むしろ弱い立場にあっても発揮される「小さな」リーダーシップの記述が示唆に富みます。いいなと思ったのは、集団や他者のために個人的リスクを引き受けるところに権力が生まれる、という考え方です。

本書にある事例ですが、学生が2人1組になって、ある課題解決のためのプレゼンテーションをします。1人は自信満々に語るのですが、審査員が「このプランの責任は誰がとるのか?」と詰め寄ると、急にしどろもどろに。その時、それまで黙っていた学生が「私が責任をとります」と答えるのです。「この時、リーダーが誰なのか分かった」と著者は書いています。権力は必ずしも肩書や実力に付随するのではない。誰しもが、他者のためにリスクを引き受けることで発揮できるものだというメッセージは、ふだんリーダーになりたくない、矢面に立ちたくないというタイプの人にも、訴えるものがあるのではないでしょうか。

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