
公益財団法人・日本財団(東京・港)会長の笹川陽平さんは、ハンセン病制圧の取り組みや国際協力事業などで、多いときは1年の3分の1近くを海外で過ごす。これまでに訪れた国・地域は120を超える。新しい土地に足を踏み入れる時は、まず、文化や伝統が色濃く反映された民族衣装をまとい、地元の人々の間に溶け込む。それが笹川さんならではの交流術だ。民族衣装には土地の気候風土に合った機能が備わっている。その衣装の下には、日本の機能性衣料、ユニクロを着用するのがお約束だ。
尊敬の気持ちを表す民族衣装
――笹川さんはライフワークとして40年ほど世界各地でハンセン病制圧活動を続け、アマゾンやアフリカの奥地にまで足を運び、患者に向き合ってこられました。文化や宗教が異なる地域では装いにも気づかいが必要なのではありませんか。
「僕が大切にしているのは、着る物でその国への尊敬の気持ちを示すことです。人々と親しくなるうえで、最大の効果を発揮するのが民族衣装。言葉じゃないんです。いつも新しい土地に行くと、その国・地域の服を現地で買って、着替えてから人に会います。その後もしょっちゅう訪れることになる地域の民族衣装は日本に持ち帰りますが、そうではないものは現地の人にあげてしまいます」
――土地の衣装には風俗が反映されていますよね。
「面白いですよ。たとえばこの頭と顔を覆う白い布。ニジェール共和国に行ったときのものですが、一部族であるトゥアレグ族の伝統的な衣装です。この布は5メートルくらいあるもので、巻くのがとっても難しいんですよ。毎朝、ホテルのスタッフにお願いして巻いてもらっていたのですが、人によって巻き方が違うんですね。まるで正義の味方、鞍馬天狗ですよね」


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