おにぎりのようにパティの中に空気を残してふわっと

オーナーの中村多聞さんは元プロのアメフト選手。現在はコーチとして指導にあたっている

オーナーの中村多聞さんに話を聞くと、“ベジなし”は、バーガー界で特に大きな流れを形成しているわけではないようだ。

「ほかにやっている店があるかどうかも、よくわかりませんが、うちみたいなことをしていたら、お客さんが来ないと思って、たいていは野菜を挟むんじゃないんでしょうか。相当強い魂がないと、野菜なしで行くのは難しいと思いますよ」

中村さんは人生最後の一食をチーズバーガーと決めている。マクドナルドのチーズバーガーで目覚めた小学生のころから変わっていないというから筋金入りである。ちなみにマクドナルドのチーズバーガーにはタマネギとピクルスは入るが、ここのハンバーガーにはそれすらも入らない。

「強い魂」の持ち主が考えたバーガーは、気合が違う。まずパティは1枚が180グラム。看板メニューの「ゴリゴリバーガー」(2000円)には、チーズと共にパティが2枚サンドされる。肉だけで合計360グラムだが、客にはアメフト関係者も多いので、これが店のレギュラーサイズなのだ。さらに上へ行ける人には3枚、4枚重ねもある。肉の量を強調すると大食いの店のように見えて、味も大味なイメージを持たれそうだが、それは早計だ。

「アメフトでは選手のあらゆる動きをデータ取りして統計を集め、解析しながら、試合を戦うんです。その習慣があったので、最初にバーガーの味を決めるときも、まずデータ集めから始めました。赤身と脂の割合別、肉のひき方別、パティの大きさ別、とサンプルをいっぱい用意して、知人に声をかけて端から食べてもらって、評価をデータで残していくことにしました。自分の好みだけではダメ、現場の意見だけでも偏る。データを記録しておけば、迷った時に戻ることもできます。僕は経験豊かな料理人じゃないぶん、ここで集めたデータを経験の代わりにして、レシピの判断材料にしたんです」

180グラムのパティを2枚挟んだ「ゴリゴリバーガー」(2000円)。すっきりとした甘酸っぱさのバーガーソースも食欲を増進する

そのデータから導きだされたのが現在のパティだ。1センチに粗びきした牛肉は赤ワインと塩、黒コショウを中心としたスパイスとドライハーブで調味している。赤ワインは知り合いのシェフからのアドバイスだ。ふわりとしたパティの食感は、こね方と成形にコツがあった。

「お母さんのハンバーグは丸めたあと、最後に中の空気を抜きますよね。それをせずに、あえて空気は残しています。コンビニのおにぎりも中に空気を残して、ほどけやすくなっていると聞いたことがあり、それもイメージにはありました。パティはつくねのようにねっとりつながる感じではなく、丸める直前もパラパラとしているので、型に入れて焼きます。焼くときも強く押しません。バンズに挟んだ時に崩れないよう焼き上げるのが一番難しい」

バンズは大阪のパン店にオリジナルを特注している。20年前に大阪で1軒目のゴリゴリバーガーをオープンするとき、知人のパン職人と試作を繰り返し、1年かけて完成させたものだ。重量のあるパティをしっかりと支える強さと、ふわりとした軟らかさを兼ね備えたバンズは、そう簡単には代えがきかない。わざわざ大阪から取り寄せるのはそのためだ。

国産のクラフトビールでは京都醸造のアイテムを必ず1種類置いている

クラフトビールは国内外のものをそろえており、割合は時期によって動く。新型コロナウイルス禍で海外からの入荷がしばらく止まっていたそうで、復活したばかりの現在は、反動もあって、海外の銘柄がかなり多くなっている。京都醸造のクラフトビールだけは、同社のホームページに「常設タップの店」として紹介されているので、切らさないように置いている。

今回の試食会では、バーガーと一緒に名物の「本物のナチョス」も登場した。中村さんが大阪で飲食店経営を始めたころから20年以上続く、ロングセラーメニューでもある。

次のページ
ゴリゴリバーガー、外国人には「ワイルド&クレイジー