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中国料理の国際化には日本も寄与した(1970年頃の「銀座アスター」の中華風おせちポスター)

中国料理の国際化には日本も寄与した(1970年頃の「銀座アスター」の中華風おせちポスター)

 問:以下から正しいものを選べ
(1)中国料理の名物「東坡肉」は北宋の詩人・蘇東坡が発明した
(2)「満漢全席」は清朝の公式晩さん会のメニュー
(3)中華料理店の「回転テーブル」は日本が発祥地

実は3問とも間違い。東坡肉は後世の明代に、食通として名高い蘇東坡の名を借りた。清朝は満州族と漢民族の料理を別々に提供し、初の満漢全席は江南地方の民間料理店という。回転テーブルは1930年代に東京・目黒で登場するはるか以前に英国で使われ、米国では特許も申請されていた……。さまざまな話題が日常的に語られる中国料理は身近な存在だ。米欧アジアなど世界各国でも長年賞味されてきており、時には現代史を動かす一因にもなったという。米中対立の行方も、食のテープルから見えてくるものがあるかもしれない。『中国料理の世界史』(慶応義塾大学出版会)の著者、岩間一弘・慶応大教授に聞いた。

19世紀に世界へ広まる

――本書は、1ページごとに美味(おい)しい香りが漂う近現代史の研究書です。今日でも料理の味に一家言ある中国のビジネスパーソンは少なくないですね。

「中国で食材や調理法の記述は、紀元前1100年~1600年頃の詩を集めたとされる『詩経』まで遡ることができます。歴代王朝の皇帝、要人らが中国料理を発展させました。中でも清朝全盛期の乾隆帝は大の美食家で、続いて清朝末期の西太后の時代にグルメの頂点を極めました。現在の中国料理の原型はこの時期までに完成していました」

「19世紀からはアジアに加え、欧米の大都市でも中国料理が広まりました。ただ国家によって体系化されたのではく、中国各地で発達していた民間料理です。米国で最初の中国料理店は1849年に開店したサンフランシスコの『広東酒楼』とされます。より中国に近い日本でも、江戸時代から和華蘭折衷の卓袱(しっぽく)料理や普茶料理がもてはやされました。1883年には渋沢栄一ら経済人が出資した東京・日本橋の中国料理店『偕楽園』が開業し、それが近代に引き継がれました。1960年代の新橋は『リトル・ホンコン』と呼ばれるほど中国料理店が集積し、各店のメニューを列挙すれば7000点以上の品名があるとされました」

「一方中国で、広大な全国の料理を統合して体系化する『中国料理』の概念が確立するのは20世紀半ばの中華人民共和国の成立からです。北京・上海・広東・四川を4大料理と説明することも、ようやく1960年頃から始まりました」

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