DariKのビーントゥバー手作りキット

コーヒーはかつてマスプロダクトのインスタントコーヒーが主流だったが、やがて街のコーヒー専門店が焙煎したコーヒー豆を買って来て、家庭でひいてドリップしていれることが普通に行われるようになった。あれを連想させる変化がチョコレートでも起きているようなイメージだろうか。

そうしたビーントゥバー・キットを扱う会社の1つがDari K(京都市)。同社のビーントゥバーによるチョコレートが昨年「セブンイレブン」でも扱われるようになって、こちらも急速に身近な存在になってきた。

このDari Kの創業のきっかけが興味深い。社長の吉野慶一さんは元金融アナリストだったが、あるときカカオ豆の生産と流通の行き違いに気がついた。というのは、カカオ豆は、コートジボワール、インドネシア、ガーナの順に生産量が多いが、日本に輸入されるカカオ豆の8割はガーナ産で、それより生産量が多く、地理的にも日本に運びやすそうなインドネシア産がほとんど扱われていないことがわかったという。

そこで現地に行って調べてみたところ、インドネシアの農場では「『発酵』という工程を行わずにカカオ豆を出荷していた」ために、日本のメーカーからは選ばれず、米国などに安価な原料として買われていたという。そこで、インドネシアでも発酵を行うように働きかけて、流通を変えようとスタートしたということだ。

カカオ豆は発酵させて使うものだったのだ。

まだまだ未解明なカカオ発酵の仕組み

カカオ豆は湿った綿のような果肉(カカオパルプ)と白い外皮(カカオハスク)にくるまれている

ビーントゥバーについて、コロンビア産のカカオ豆を輸入するフィノデアロマ(東京・文京)という会社の方が登壇するセミナーに参加したことがある。その折に、発酵前のカカオ豆を見せてもらった。カカオ豆はフットボール形の果実(カカオポッド)の中に収まっている種子で、湿った綿のような果肉(カカオパルプ)に包まれていた。豆(胚乳)は一見しっとりとした白い粒に見えるが、それは豆の外皮(カカオハスク)で、中に褐色を帯びた粒が入っている。

カカオハスクを取り除いた豆はそのままでも甘く香ばしいような香りがかすかにはして、おそるおそるかじってみると、ほのかな甘みがあるような気がした。ただ、はっきりとしたカカオの香りは、発酵させることで初めて生まれるという。

説明してくれたフィノデアロマの竹内一裕さんによると、それぞれの農場で大切に使っている木箱にカカオポッドをそっと収めて保管する間に、その木箱に付いている微生物によって発酵が起こるという。一度収めて終わりではなく、ときどき位置を入れ替えるなど、なかなか世話が焼けるもののようだ。

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生産地の幸せと食べる人の幸せ