女性役員は社内で育成 30%目標達成へ企業動く

あいおいニッセイ同和損保の取締役に今年就いた一柳若菜さん。6月に同社本社で撮影

金融庁と東京証券取引所は今年6月、上場企業の経営指針といえるコーポレートガバナンス・コードを改訂しました。その中で取締役会は女性を含む多様なメンバーで構成すべきだとする原則を明示しています。様々なバックボーンやスキルを持つ人材が、多角的に経営課題を分析・検討し、適切な経営判断につなげようという考え方です。

今年は、あいおいニッセイ同和損保や大日本印刷などで女性取締役が誕生しました。ただ、東京商工リサーチが2021年3月期決算の上場企業2220社を対象に調べたところ、女性役員比率は7.4%にすぎません。またここ数年、企業は外部人材を抜てきすることで女性役員を増やしてきました。底上げを図るには女性の生え抜き役員が次々と誕生する環境が必要です。そうした環境をつくろうと、先進企業は大胆な手を打ち始めています。

SOMPOホールディングスは、グループ各社の最高経営責任者(CEO)や役員など主要89ポストについて、サクセッションプラン(後継者育成計画)を17年度から策定しています。次代または次々代に誰が就きうるか、1つのポストに10人以上の具体名を挙げます。今秋からは候補者の4割は女性にするという数値目標を設定しました。

初年度の今年は残念ながら32.8%にとどまりました。それでも人事部門の担当者は「黙っていると現場は後任候補に男性ばかり挙げてくる。必ず女性を候補に入れることで、育てる意識が芽生える」とその効果に期待します。

経営責任が問われる役員への女性登用は、管理職への抜てき以上に経験や能力が問われます。

能力が劣っているのなら、修羅場を与えて鍛えよう――ダイキン工業はそんな方針で女性幹部候補の育成を進めています。15年に始めたスポンサー制度です。将来を嘱望される女性社員にマンツーマンで役員クラスの指導者を付けます。仕事の進め方などの相談に乗るだけでなく、成長に必要と思えば、社内プロジェクトへの参加や配置転換なども実現します。制度開始から5年を経て、女性役員候補者が順調に育っているといいます。

社員構成同様に取締役会のダイバーシティー(人材の多様性)実現は国際的にも喫緊の経営課題です。機関投資家は、女性役員の有無を投資するか否かの判断材料にもしています。こうした国際情勢も踏まえて、経団連は昨年、30年までに女性役員比率30%を目指すと定めました。

女性役員比率向上を目指す30%クラブ・ジャパンの創設者で、シンク・インパクツ(東京)代表取締役の只松観智子さんは「役員への女性登用は企業の持続的成長に欠かせない。熱心な企業と無策の企業の二極化が著しい。経営トップが強く関与しないと状況改善は進まない」と指摘します。

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Think Impacts代表取締役・只松観智子氏「経営トップ