この苦境を助けてくれたのが「中国からの患者さんたち」でした。日本の初診患者が減った半面、中国から初診患者が増えたのです。通訳さんに聞くと、「紅いグーグル」とも呼ばれる中国の検索大手「百度(バイドゥ)」で、「日本 糖尿病 名医」と検索すると、私の名前が最上位にランキングされているとのことでした。

おそらく、私の著作が中国で翻訳されて知名度が高かったことで、日本でトップレベルの糖尿病専門医と評価されていたようです。中国での書籍デジタル販売に加えて、その無断コピーを放置していたのが結果として奏功したようです。

ところが、新型コロナウイルス禍で、中国からの新規患者は皆無となってしましました。そして現在、グーグルの検索上位に表示されるのは、表示順位を上げる検索エンジン最適化(SEO)対策を熟知している医師と広告ばかり。さらに、グーグルマップ上での検索順位を上げるMEO (Map Engine Optimization、マップエンジン最適化)も進み、近くの医師を探すことが優先されるようになってきました。

本当に探したい医師が見つからない

これでは、患者さんが本当に探したい医師を見つけることができません。遠方に名医がいても分からないのです。

こうした問題が浮き彫りになってきたのと時を同じくして、「オンライン医療」の本格的な普及が動き始めました。まさしく、ここで、ゲームチェンジが始まるのです。グーグル検索に依存せず、名医を優先的に探すことができる、世界に通用するプラットフォームの誕生が期待されているのです。2022年は、世界中の医師たちのネットへのモチベーションやインセンティブが、大きく変革する年になるかもしれません。ネット世界を事実上支配するIT大手の常識を覆す、「The 開業医」が生まれる素地はできました。

鈴木吉彦
1957年山形県生まれ。83年慶大医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病治療を専門に研さんを積む。 その後、国立栄養研究所、日本医科大学老人病研究所(元客員教授)などを経て、現在はHDCアトラスクリニック(東京・千代田)の院長として診療にあたる。

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鈴木医師が院長を務めるHDCアトラスクリニックのHPでは、専門である糖尿病に関する情報を幅広く紹介しています。

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