
DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代、医療はどう変わっていくのか。生活習慣病の代表格ともされる糖尿病の専門医で、1990年代後半~2000年にかけて医療情報ポータルサイト(MediPro/MyMedipro)を立ち上げるなど、デジタル領域についても豊富な知見を持つ鈴木吉彦医師(HDCアトラスクリニック院長)に医療とデジタルの新時代について語ってもらいます。
大学を卒業して東京都済生会中央病院(東京・港)に勤務していた頃、60歳を迎えて定年退職する先生に「どこで開業するのですか?」と尋ねたことがあります。「都心の一等地かな」と思っていたところ、先生の答えは「世田谷のバス停前にある親から相続した土地で開業する」というものでした。
「東京・世田谷」すなわち、狭い道路が多くバス利用者が多い。「バス停の前」すなわち、高齢者が乗り降りする――。「なるほど、患者さんには困らないだろうな」と膝を打ちました。
一般に「開業医」は40歳代で開業しないと成功が難しいとされます。ところが、この先生のように場所などの条件を適切に選べば、60歳を超えた医師でも開業して成功する確率を高めることができるのです。
私は現在、皇居にほど近い東京都千代田区一番町で開業しています。都心ではありますが、表通りから外れた場所で、オフィスが多いこともあり近隣に住民が少なく、開業には不向きとされる場所です。
同じ日のうちに教授と開業医に
「開業医」を除けば、私の最終職歴は「日本医科大学客員教授」となります。日医大の歴史でも6人しかいない「客員教授」の1人となるわけで非常に名誉なことでした。ですから大学で「教授授与式」が終わったその足で、クリニックをオープンさせて「開業医」になりました。2004年4月1日のことです。つまり同じ日のうちに教授となり、開業医になったのです。