「3点目は、『属性憑依(ひょうい)』。自分と同じ属性の人が、どのような評価をしているかに着目して口コミを読んでみましょう。例えば、営業担当者からは評判がよくても、エンジニアは辛口の評価をしているといったこともあります。職種や性別など、自分と同じ立場の人がどのような内容を書いているかを見てみると、就職・転職後の自分を想像しやすいでしょう」
「4点目は、『時間軸』。この会社はどのように変化しているのか、例えば総合評価の点数が3.0だとして2.7から上がったのか、3.3から下がったのか。時系列を意識して見ることです。大手企業であれば中期経営計画を基に、3~4年であっという間に組織体制が変わることも珍しくありません。そのような観点からも、『今』という点だけの情報ではなく、時間という線にも注目してほしいです。この4点に気を付けて口コミを読めば、短時間でその会社の社員と同じように、会社に詳しくなれるかもしれません」
SNSの時代だからこそ、口コミサイトを見てほしい
――会社を退職した人の口コミは、ネガティブになりがちなのではないでしょうか。
「実は最近は、退職者の口コミでも一概にネガティブな内容だけではないのです。比率として、ネガティブな口コミと同じくらいポジティブな内容が増えてきています。背景にあるのは、人生100年時代となって長期的なキャリア形成を考える人が増え、『今の会社に不満があるわけではないが、自分のキャリアのことを考えて別の会社で働きたい』というポジティブな転職が増えていることです。退職した人が以前の職場にネガティブな感情を持っているかというとそうではなくなってきており、恨みつらみを書き連ねたようなコメントは割合として減っています」
――評価の高い口コミが目立つ企業を見る際、逆に注意すべき点はありますか。
「そのようなときはできるだけ、ネガティブな意見を探してみましょう。100点満点の企業はなかなかありません。そうした前提を踏まえて、いい口コミだけではなく悪い口コミがないか探してみること。そのうえで、『この口コミの内容は気にならない、許せる範囲だ』と自分に合うか合わないかを判断していけばいいでしょう」
――SNSでも企業の評判を目にすることが増えています。どう判断すべきか、注意点はありますか。
「誰が発信しているのかは、必ず確認しましょう。企業の人事担当者が発信したものであれば、自社の良い点をアピールするのは当然です」
「インスタグラムや動画共有アプリでも企業の情報が流れる時代ですが、だからこそ、口コミを見てほしいと思っています。SNSはその仕組み上、自分が『いいね』を押したのと似たような情報が流れてくるようになっています。『フィルターバブル』と呼ばれるこの現象では、自分の好みの情報だけが集まります。言い換えると、自分が見たくない意見は表示されず、一面的な企業情報にしか触れられない可能性があります」