2020年5月13日に撮影された王妃の木立の航空写真。修復プロジェクトが進行中であることがわかる(COURTESY T. GARNIER, CHÂTEAU VERSAILLES)

世界から集めた多彩な植物

1770年代、マリー・アントワネットは自分の思い通りにできる約2万平方メートルの土地を手に入れた。

この土地の造園を任されたドリームチームは、世界中を航海して集められた外来種からひらめきを得た。集めた植物はトリアノン(現在の大トリアノン宮殿)と王妃の木立で栽培された。世界の生物の多様性を体現するショーケースとして、王妃の木立はそれぞれ異なる植物の緑の「部屋」が並ぶデザインを採用した。

王妃の園芸家は世界屈指の植物学者たちと連絡を取り、種とともに情報を交換した。その国際的な科学交流が、文字通り、王妃の木立に花を咲かせた。中東からセイヨウハナズオウが、東洋からサクラが、そして当時人気を集めていた新世界の米大陸からはさまざまな種類の植物がもたらされた。

なかでも米国のバージニア州からやって来たユリノキは王妃のお気に入りになり、王妃が子どもたちや仲間と集う「メインルーム」の呼びものになった。「最初の木がベルサイユ宮殿に来たのは1732年です。チューリップのような美しい花はもちろん、観賞用の樹木としては驚くほど大きく、その可能性に大きな期待が寄せられていました」とシャンピーニ氏は説明する。計画通り、ユリノキは木立のメインルームで花を咲かせた。

「これらの植物は原産地だけでなく、花の美しさや香りも重視して選ばれています」とシャンピーニ氏は話す。「ベルサイユ宮殿では革命的なことでした。ほかの庭園はとても緑が多く、巨大な緑のタペストリーのようでした。アクセントとして彫刻や噴水が配置されていましたが、花はありませんでした」

マリー・アントワネットは花が好きだった。お菓子やファッションとともに、バラに夢中だった。そのコレクションは、世界中から旅行者がわざわざ鑑賞に来るほど有名だった。

2021年6月9日に撮影された王妃の木立の航空写真。庭園の修復が完了している(COURTESY CHATEAU VERSAILLES)

資料を読み解き当時の庭園を再現

王妃の木立を正確に復元するため、ベルサイユ宮殿の歴史学者たちは資料をくまなく調べた。1775年の構想について詳述した書簡には、園芸家の1人が「木や葉の形、花の色、花が咲く時期、葉の色合いなど、芸術的なバラエティー」が必要だと記している。