日経クロステック

会社員時代は身支度などに時間を費やすでしょうが、会社には行かないので身支度もそこそこで終わります。とりあえずテレビや新聞でニュースをチェックすることから始めましょうか。「朝はランニングをする」という方はぜひそうしてください。

そして朝食です。午前7時から8時の間に食べるとしましょう。片付けも含めて1時間。ここで2時間朝食を取る方はゆっくりどうぞ。

朝食が午前8時に終わったらお昼まで4時間ほどあります。何をしましょうか。

ここでFIREの醍醐味が発揮されます。働かないという選択をした方は、やりたいことに時間をフル活用しましょう。ゴルフをする、バンド活動をする、ぶらぶらするなど、誰にも邪魔されない時間が4時間確保できます。

まずは、この午前中の4時間を過ごすだけでも、そこそこ自分で予定を立てておくことが重要です。そうしないとあっという間に「何もすることがない人」の出来上がりです。

そしてお昼が来たとしましょう。朝食と同様、正午から午後1時まで1時間かけます。パートナーが家にいてその人と一緒に昼食となると、これが毎日続きます。

職場であれば、日によって違った仲間とお昼を一緒に取って情報交換したり、ときにはたわいもない話をしてストレスを発散したりできたでしょう。また職場の人間関係や仕事に疲れたときは、1人になってホッとできたのもこの時間です。それが組織から離れたら、毎日パートナーと一緒です。

もちろんそれが楽しい人もいます。筆者が開催するワークショップでも「毎日配偶者と食事ができるなんて幸せこの上ない」という方もいます。ただ、本人が望んでいても相手が望んでいなければ、気まずい時間になることもあります。“ぼっちメシ”が待っているかもしれません。

そんなこんなで昼食が終わると、また「自由な4時間」がやってきます。午後1時から午後5時まで、何をしますか。午前中にやりたいことは一通りした、午後は何をしたらいいのかと困る人は少なからずいます。

いわば、ネタ切れです。日中8時間働いて過ごしてきた時間をすべて自力で有意義な時間にするのは、実はなかなかテクニックが必要なのです。

やっと午後5時で夕食の時間を迎えたとしても6時には終わり、夜の時間がやってきます。午後10時に就寝するとしたら、さらに4時間あります。

毎日、同じ所に飲みに行くルーティンでもあればよいかもしれませんが、お店を変えながら飲みたい場合、候補はありますか。夕食もおいしいお店を食べ歩きたいと思うかもしれませんが、そうなるとお財布事情に影響が出てきます。

このように、1日の間に自由な時間が4時間×3回もあるのです。合計12時間を有効に過ごすことをきちんと考えないと、何のためにFIREをしたのか分かりません。

「なんとなく仕事を辞めたい」という曖昧な思いではなく、具体的に何をしたいかをはっきり意識することで、自発的早期リタイアも挑戦する気になるでしょう。定年後であればなおさらです。シートの右下には受講者が定年後にしたいことの例を挙げてありますので、参考にしてください。

働いているうちに友達をつくろう

最後にもう1つ考えておきたいことがあります。毎日同じメンバーで、同じ趣味に時間を費やすのが嫌だという方は、この壮大な空き時間を共有する仲間をたくさんつくっておかなくてはなりません。曜日ごとに違う相手を確保できるならそれが理想でしょう。

空き時間を共に過ごすのであれば、同程度の経済的状況にあり、同じような時間の使い方ができる仲間をつくっておく必要があります。そうでなければ、5~10年単位で付き合いを続けるのは難しいでしょう。

以上を踏まえて、筆者は受講者に「在職中に友達をたくさんつくっておこう」というアドバイスをするようにしています。ごくごく基本的ですが、とても重要なことなのです。

天笠 淳(あまがさ・あつし)
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。

[日経 xTECH 2022年8月18日付の記事を再構成]