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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。ビジネスパーソンや出張客の来店がめっきり少なくなり、都心立地の同店は低調な状況が続く。文庫や新書、料理書などの普段使いの本は比較的好調だが、ビジネス書となると新刊の反応が鈍いという。そんな中、書店員が注目したのは、交渉術の全米トップ講師が交渉術のテクニックを網羅的に解説した名著の邦訳版だった。

原著は95年刊の世界的ロングセラー

その本はロジャー・ドーソン『本物の交渉術』(小山竜央監修・島藤真澄訳、KADOKAWA)。〈あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」〉との副題がつく。原著は『Secrets of Power Negotiating』といい、訳者のまえがきによれば、1987年にビジネス系のカセット・オーディオプログラムとして発売されて大きな売り上げを記録、95年に書籍化されて以降、英語圏はもちろん多くの言語に翻訳されて読み継がれてきたロングセラーだという。邦訳されるのは初めてで、2021年に25周年版として改版された最新版を翻訳した。

著者は本書の略歴によれば、米カリフォルニア州の不動産会社経営からプロ講演者に転じ、米国やカナダ、アジア、オーストラリアなどで経営陣や営業担当者向けの研修で活躍しているという。研修を通じて出会った人々のエピソードや日常の事例などを交えて語られる交渉テクニックは納得感のある具体性に満ちている。

全体は5部構成。450ページ強の分量に61の章を詰め込んでいる。全体の半分近くを占める第1部では、伝統的な交渉のスキルを基礎から応用まで網羅的に語る。ギャンビット(チェスにおける優位に立つための先手)という言葉で交渉テクニックを小分けにして序盤から終盤まで局面ごとに解説する構成がとにかくわかりやすい。

1階のビジネス書の近刊を並べた面陳列棚の最上段に2冊並べて展示する(八重洲ブックセンター本店)

1階のビジネス書の近刊を並べた面陳列棚の最上段に2冊並べて展示する(八重洲ブックセンター本店)

「期待以上の要求をする」「最初のオファーにイエスと言わない」「提案にひるむ」「対立的な交渉を避ける」などが序盤のギャンビットで、それぞれ章立てされて4~5ページから長いと10数ページで解説される。売り買いの価格交渉から子どもとの小遣い交渉など身近な事例も理解を助けてくれる。大半の章末に《覚えておくべきキーポイント》が簡潔な箇条書きでまとめられているから、興味を持った章だけ拾い読みしても役に立つ。

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