育成塾や役員との対話通し、内面に変化

育成塾には5年間で約130人が参加。17年の開塾当時は30%だった女性管理職比率は22年に37.3%まで上昇した。当初は及び腰で参加していた塾生たちが、卒業時にはそれぞれのリーダー像を自発的に描くようになるなど内面的にも大きな変化が生まれているという。

キャリアデザインの形成を後押しするため、20年から始めた女性役員との対話の場も好評だ。野さんも塾生時代に経験し、大きく背中を押されたという。「役員の方の子育て時の苦労を知り、身近に感じられた。良い体験だった」

ほかにも、目的に応じて出社とリモートワークを使い分けられる「ハイブリッドワークスタイル」や、スーパーフレックス制度を整備。男性社員向けにアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に関するワークショップや育児体験プログラムを展開するなど、社全体としての働きやすい環境作りが進んでいる。

同社が女性活躍をさらに推進していくなか、野さんも自身が果たすべき役割を考え始めている。「部下には管理職へのハードルが高いと思ってほしくない。身近なロールモデルとして、影響を与えられるようになりたい」

■視点の転換うながす
取材を通して見えてきたのは、社会全体における女性のキャリア形成上の課題だった。自分の実力を過小評価する「インポスター症候群」になりがちで、ステレオタイプのリーダー像にとらわれた社員自身の思考をどう変えていくか。同社はリーダー育成塾など長期のプログラムで、女性社員一人一人の視点の転換をうながしてきた。

「多様性が進めばイノベーションが起きる」と魚谷社長。昨年秋からは中長期の成長戦略を議論する全社員参加型のプロジェクトも始まっているという。同社が描く多様な働き方の未来図にこれからも注目していきたい。
(堀部遥)

[日本経済新聞朝刊2022年5月16日付]