東大に異変、文3が文1を逆転 看板学部に曲がり角

東大1~2年生が学ぶ駒場キャンパス

日本の政治家や官僚、法曹界の人材を輩出してきた東京大学法学部。しかし、2021年、東大入試の文系合格最低点で、法学部に大半の学生が進む文科1類は文2(主な進学先は経済学部)、文3(同文学部)を下回った。1世紀半に及ぶエリート養成学部が曲がり角を迎えている。

「我々の入学時は偏差値で言えば文1が70ならば、文2は66、文3は65ぐらいで歴然とした差があった印象。官僚や法曹の人気が下がり、実業に強い文2を下回るのは分かるが、文3にもとは」。2000年に東大文1に入学した元外交官の鈴木祐介さん(40)は母校の異変に驚きを隠さない。

河合塾によると、21年の東大文系の合格最低点は文1が335点、文2が338点、文3が337点。すでに19年に文1は文2を下回ったが、21年にはついに文3にも逆転されたわけだ。1877年に誕生した東大。官僚など国家を担うリーダー人材の養成を目的とした最高学府では文1、文2、文3という序列が明確であった。文1は日本のトップエリートの登竜門だったのだ。

歴代首相には東大で法律を学んだ官僚出身者が並ぶ

吉田茂、岸信介、佐藤栄作、福田赳夫、中曽根康弘、そして宮沢喜一。昭和から平成にかけての戦後史を彩る歴代首相には、東大で政治や法律を学んだ官僚出身者が並ぶ。全国の秀才たちは競って文1の門をたたき、法学部に進学。「国1」と呼ぶ国家公務員試験や司法試験などの難関試験に挑み、官僚や弁護士など中央官庁や法曹界の中枢を担うリーダー人材になった。

しかし、「東大の文科の難易度はフラットになった」と河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は語る。文1凋落(ちょうらく)の最大の要因は官僚や弁護士などの人気低迷だが、なぜ文3の後じんも拝したのか。大半の学生が文学部や教育学部などに進む文3はかつて、就職先が限られると敬遠する受験生もいた。

近藤氏は「今の受験生は東大にこだわりはあっても、科類はあまり気にしない。進学振り分け制度もあり、様々な学部に進むチャンスもある。就職面でも不利ということはない」という。東大は1~2年時は教養学部という1つの学部に全学生が入る。そこから3年次に「進振り」という独自の進学選択制度により、各学部に進む仕組みだ。文1は3年次から法学部に優先的に進学できるが、成績次第で文理に関係なく他学部にも進学できる。文3からも法学部や経済学部、理系の学部にも進学可能だ。2008年度以降に同制度の改革が進み、より柔軟性が増した。

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