「力と不死の象徴」コンドル 絶滅危機を乗り越えるか

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

2022年4月、アルゼンチンのメンドーサにあるコルドン・デル・プラタ公園で、リハビリを終えて放鳥される若いコンドルの「トゥプン・カトゥ」(PHOTOGRAPH BY SOFIA LOPEZ MAÑAN)

世界最大の猛禽(もうきん)、コンドルが減っている。地元アルゼンチンではこの鳥を復活させるべく、保護活動が続けられている。

翼を広げたときの長さは3メートル、寿命50年の巨大な鳥コンドルは、かつては南米アンデスに広く分布し、先住民から力と不死の象徴としてあがめられてきた。現在、少なくとも4カ国で国鳥に指定されている。

残りは6700羽

しかしそのコンドルですら、人間活動の影響から逃れることはできない。飛行中に風車や電線に衝突したり、銃で撃たれた動物の死骸を食べて有害な鉛の弾丸をのみ込んでしまったり、害獣を駆除するために置かれた毒を誤って食べてしまったりすることがある。コンドルを狙った狩猟や密猟も、多くはないが、完全になくなったわけではない。

伝統的な双頭のコンドルの姿が彫り込まれた杖(つえ)。放鳥の儀式に使われる (PHOTOGRAPH BY SOFIA LOPEZ MAÑAN)
「クルーフ」は、パタゴニアの大西洋沿岸で放鳥された64羽のコンドルのうちの1羽だ。地元の口承や、ここを訪れたチャールズ・ダーウィンの記録などの歴史的資料を基に、19世紀のコンドルの分布域を特定し、再導入を進めた結果、今では170年ぶりに、アルゼンチンの東海岸から西部まで、同国全域でコンドルを見ることができるようになった(PHOTOGRAPH BY SOFIA LOPEZ MAÑAN)
2021年6月、鉛の銃弾をのみ込んで死んでいるのが見つかったコンドルの「スーヤン」。パタゴニアに放鳥されてからまだ2年もたっていなかった(PHOTOGRAPH BY SOFIA LOPEZ MAÑAN)

コンドルは、野生には成鳥が6700羽しか残っていないとされ、国際自然保護連合(IUCN)は危急種(vulnerable)に指定している。そのため、科学者、保護活動家、先住民コミュニティーは、個体数を回復させようと保護に取り組んでいる。

なかでも、アルゼンチンで30年にわたりコンドルの保護活動をけん引してきたのが「コンドル保護プログラム(PCCA)」だ。この間、少なくとも全個体数の5%以上に当たる370羽のコンドルを保護し、80個の卵を孵化(ふか)させ、野生に戻してきた。そのかいあって、最近はパタゴニア地方南部の大西洋沿岸で、再びコンドルの姿が見られるようになった。

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