入社時だけでなく、入社後の年収可能性を確認

オファーされた年収額は、転職時に皆さんの選択に大きな影響を及ぼしがちです。でも、年収額にはとても敏感なのに、皆さんがあまり目を向けないので、とても不思議に思う項目もあります。それは、入社後の給与支給ルール、年収変化の可能性です。

入り口の年収ももちろん大事ですが、そこから頑張ってどのような期待値や見返りがあり得るのか。年収を気にするのであれば、そちらのほうが入社時のオファー年収よりも何倍(何十倍)も重要です。

実際に私も多くの皆さんの転職、キャリアの歩みを拝見してきて、入社時に年収を下げて転職した人がその後の活躍で昇進し、過去に在籍した企業で想定される年収上がり幅を大きく超えた年収となったケースも非常に多くあります。逆に好条件で入社したのに、その後が停滞してしまい、再転職を繰り返した末に、年収を大きく落としてしまった人もいます。

入社後にどう給与が変化するかを、事前に全て知ることはできませんが、予見するための材料はあります。たとえば、次のような点が参考になります。

・転職検討先企業の給与テーブル・評価ルールはどのようなものか?

・給与(人件費)についての会社の考え方、思想はどのようなものか?(年功型・成果型、業績連動の幅の取り方、給与原資の配分ルールなど)

・企業自体の成長、ステージアップにひも付く給与変化の期待値はどの程度か?

・業界構造に連動する給与水準(業界平均の収益力、原価率・人件費率)はどれぐらいか?

上記のようなところから、入社後の中長期的な年収を類推したうえで、どのようなチャンス、リスクを選ぶか、選ばないのかを、意思決定するのが賢明です。

実は転職時に、皆さんのオファー年収額の決定に大きな影響を及ぼすものがあります。それは、現職での実績年収です。

特に日系企業では、多くの場合、現職給(離職者の場合、前職給)を基準にオファー提示年収を決定します。転職する側も受け入れる側も、入社後の活躍度合いは最初は分からないので、初年度については現職(前職)給を保証。2年目から実績考課を行っていくという考え方です。

つまり、転職で高年収を実現するには、現職でしっかり年収を上げておくことが肝心なのです。私が入社時のオファー年収以上に、入社後の年収変化可能性とルールが大事だと言ったのは、そういう意味でもあります。

ここまで年収についてみてきて、最後にお伝えしたいことは、「年収額が第一優先の転職は、うまくいかないことが多い」ということです。

年収の額は、業務成果の結果に応じて得られるものです。年収にこだわるとは、この原則を理解しておらず、「先に欲しがる」行為。このことに、企業側の経営や人事は当然、難色を示します。また、年収に固執する人は、入社時に満足の年収で入社しても、早晩、その額に飽き足らなくなり不満を持つようになります。これらの理由から、「年収ファースト」の応募者は採用企業側から嫌われるのです。

家族・家計を守るためにも、自らのやりがいのためにも、転職時の年収額は大事です。しかし、年収ロジックを理解した上で転職先を選び、さらに入社後に結果を出せているか否かで、キャリアの展開や年収の伸びしろは大きく異なってきます。この点をよく考えて、転職活動を進めてほしいと思います。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
井上和幸
経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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