検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

科学の限界を押し広げる 注目を集めるオリガミ

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

古くから日本人の目を楽しませ、制作意欲をかき立ててきた折り紙。この日本の伝統が今、科学と技術の最前線で新たな可能性を開く技法「オリガミ」として注目を集めている。その分野は、宇宙探査からバイオ医工学、建築、ロボット工学、マイクロ・ナノ工学まで多岐にわたる。

◇   ◇   ◇

米ウェスタン・ニューイングランド大学の数学者であるトマス・ハルは長年、折り紙のパターンの数理的な解析に取り組んでいる。彼の小さな研究室には、そこかしこに折り紙が飾られていた。ハルが折り紙に魅せられたのは10歳のとき。折り鶴を開き、平たい紙に付いた規則的な折り線に驚いたことがきっかけだった。

ルールがあるから形になるのだと、彼は確信した。その折り紙の世界を支配する数学的なルールを突きとめようと、ハルをはじめ多くの研究者たちが、何十年も研究を重ねている。

子どもの遊びから科学へ

ハルはいくつもの折り紙を見せてくれた。たとえば、折り目をわずかにずらしながら山折りと谷折りを繰り返し、平行四辺形が並んだ折り線を作る「ミウラ折り」と呼ばれる折り方で畳んだ1枚の紙は、両端に軽く力を加えるだけで、瞬時に開閉する。1970年代に航空宇宙工学者の三浦公亮が開発したこの折り方は、95年に日本が打ち上げた宇宙実験・観測フリーフライヤー(SFU)の太陽電池パネルに応用された。

以来、折り紙の技法はさまざまな素材を折り畳むために活用されてきた。その一つに微細な細胞シートがある。北海道大学の研究者、繁富(栗林)香織が考案した技術「細胞折り紙」では、立方体の展開図のようなマイクロプレートを使う。プレート上で細胞が培養されて広がると、細胞にもともとある内部に縮まろうとする力が働き、プレートが引っ張られて折り畳まれ、重富が細胞の「レゴブロック」と呼ぶ立体的な構造になる。将来的には、この技術を再生医療に役立てたいと、繁富は考えている。

今でこそ折り紙は科学技術の人気分野の一つだが、初期の研究者たちは周囲の無理解という壁にぶつかった。ハルは、1997年に科学研究と教育を支援する米国立科学財団(NSF)の事業責任者と交わした議論を今でも覚えている。彼が研究の構想を話し始めると、相手はそれを途中でさえぎり、NSFは、標題にオリガミという言葉が入っている研究計画には一斉助成金を出さないと断言した。

こうした懐疑的な見方があったのは米国だけではない。折り紙の工学的な応用研究で知られる東京大学の舘知宏に尋ねたところ、彼は苦笑し、日本では子どもの遊びと見なされがちだと話してくれた。ただ、この20年ほどで風向きは変わった。その先鞭(せんべん)をつけたのがNSFだ。

2009年から一時的にNSFに在籍したグラウシオ・パウリーノは、折り紙研究を支援するよう働きかけた。今は米プリンストン大学の教授を務める彼はこう明かす。「提案がいかに正しいか、なかなかわかってもらえませんでした」

それでも努力は実った。NSFは折り紙研究に助成金を出す公募を、これまで2回行った。最初は2011年で、折り紙と科学を融合させる研究計画が多数寄せられた。これを機に、折り紙研究はれっきとした科学の一分野となった。「大きな反響がありました」。まさに折り紙の時代がやって来たと、ラングは感じたと言う。

科学の限界を超えて

今では折り紙は、科学の限界を押し広げつつある。とりわけ微細な物質を扱うナノレベルの世界ではそれが顕著だ。夏のある日、米ペンシルベニア大学の電気工学者であるマーク・ミスキンを訪ねた。同大のシン・ナノ工学研究所のロビーに立ち、ガラスの壁の向こうをのぞくと、いくつものクリーンルームで防護服姿の研究者が顕微鏡をのぞいたり、換気フードの下で作業をしたりしていた。

ここでミスキンは学生たちとともに、ちり程の大きさのロボットを大量に作製している。ギアなどの動力伝達の部品を伴う装置は、ニュートンの運動法則が通用する日常的なスケールの世界では大概うまく機能する。だが、極小世界では摩擦などの力が大き過ぎて、ギアもホイールも回転せず、ベルトは動かなくなる。

そこで折り紙の出番だ。折り畳むことで摩擦が減るので、少なくとも理論的にはどんなサイズでも、同じように曲がったり動いたりするはずだ。半導体のチップ上に集積回路を形成する技術を使って作製されたミスキンのロボットは、平たい薄片に4本の "脚"が付いている。それに電圧をかけるなどの刺激を与えると、脚が曲がり、スライドガラスの上の水滴の中を歩いたり、そばを通るアメーバに手を振ったりする。

このロボットは将来的に幅広い用途で活躍する可能性があるとミスキンは語る。だが、今の彼の最大の関心事は技術の限界を押し広げることだ。「難題を解決しようと知恵を絞れば、その見返りに面白い技術を開発できるものです」

(文 マヤ・ウェイ=ハース[英語版編集部]、写真 クレイグ・カトラー、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック日本版 2023年2月号の記事を再構成]

ダイジェストで紹介した記事は、ナショナル ジオグラフィック日本版2023年2月号特集「未来を開くオリガミ」です。このほか、北米の太平洋岸で数が増えているラッコ、西アフリカの建築家たちが目を向ける伝統的な泥の建築、アフリカ沖の大西洋に浮かぶカナリア諸島のミイラなどの記事を掲載しています。Twitter/Instagram @natgeomagjp
  • 著者 : ナショナル ジオグラフィック
  • 出版 : 日経ナショナル ジオグラフィック
  • 価格 : 1,250円(税込み)

この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_