タワーマンションは在宅避難が前提。1週間分は備蓄を準備したい

――今回は高齢化が地震の被害に与える影響も考慮に入れます。

「おそらく世界で初めてだと思うが、今回の被害想定では震災関連死を想定することにしている。従来は『高齢者は弱者で逃げられず、震災の直接死のリスクが高い』とされてきた。しかし、直接の犠牲にならなくても、その後の避難生活での対応に失敗すれば、関連死の形で命を落としてしまう。関連死を想定することは、高齢社会を襲った災害で被災後の対応や対策をどうすればよいかを考える材料を提供することにつながる」

「震災関連死は阪神大震災で初めて認定され、直接の犠牲者と同じ扱いにして、災害弔慰金や見舞金が遺族に支払われた。関連死は新潟の中越地震や東日本大震災、熊本地震などでも発生しているが、その8~9割が高齢者だ」

「実際、高齢化の進んだ地域での災害では、直接死より関連死が多い。中越地震は震度7の揺れによる直接死は16人で、避難所などで関連死と認定された人は52人だ。熊本地震は2度の震度7による直接死は50人で、関連死はこれまでに226人が認定されている」

「東日本大震災は死者・行方不明1万8425人に対して関連死3774人だが、原発事故で避難生活が長期化している福島県だけは死者・行方不明1810人、関連死2319人と関連死の方が多い。東京も高齢化が進みつつあり、首都直下地震でも支援体制をよほど組織的にきちんとやらないと関連死が続出する恐れがある」

――新型コロナウイルス下で密にならないよう避難所の運営も変わってきています。

「被災地は衛生環境の悪化から感染症が発生しやすく、コロナでなくても避難生活は3密防止が世界の常識だ。国際的な人道団体が20年前から定める避難スペースの最低基準(スフィア基準)は1人当たり3.5㎡。日本はコロナ下で1人当たり4㎡とるようになり、ようやく国際基準に追いついた」

熊本地震で支援物資を受け取る被災者(2016年4月、熊本県益城町)

「これまでの避難所は、避難所に来る人だけに支援していた。これではわざわざ避難所に食料などを取りに来ることになり、3密を誘発してしまう。これからの避難所は、在宅で避難生活をする人にも必要なら食事や水が届くよう、地域で避難生活をするすべての人のための支援拠点にしていくべきだ。それには行政と地域の人の協力体制が必要だ」

「例えば、避難所にいる人が300人でも、在宅避難の人が200人いれば弁当は500個いる。どこにだれが在宅避難しているかは地域の人でなければ把握できない。弁当を1日3回、在宅避難している人に届ければ、3回声かけすることになり、孤独な関連死を防ぐことができる。地域のみなさんが対策に取り組んでくれれば関連死をこれだけ減らせるという対策効果も出し、具体的な対策につながるようにしたい」

――最近は被災者が自家用車に車中泊するケースも増えています。

「車中泊する人には、完全に車で暮らす人や、情報が欲しいので学校の校庭で車中泊する人などいろいろな形がある。3密を避け、プライバシーを守るためにも有効だ。車中泊で注目された中越地震や熊本地震は、全壊1000棟あたり3万人が避難していた。これは余震が多く、家が壊れていない人も怖がって避難したためだ」

「しかし、東京でこれをやったら車があふれ、救助やがれきの処理もできない。首都直下地震では家が壊れていない人は在宅で避難し、生活に必要な支援は避難所を拠点に地域全体で助け合って届ける仕組みが必要だ。タワーマンションはその棟でまとまって助け合うのがよい」

「被害を減らすのはあなたで、行政は、あなたが被害を減らそうとする自助を支援する立場だ。行政任せでは助からない。『もう年だから死んでもいい』というのは何もしない言い訳に聞こえる。そういう人もいざというときは『死にたくない』はずだ。『自分でできることは何か』と考えていただければだいぶ違ってくる。一人一人の備えが大事だと気づいてもらえる被害想定にしたい」

(編集委員 斉藤徹弥)

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