日経クロストレンド

新開発のディスプレーが鍵

ThinkPad X1 Foldは、2020年10月に13.3型有機ELディスプレーを搭載した初代モデルが発売された。新モデルの開発では、そのユーザーからのフィードバックを盛り込んでいる。ユーザーからは処理性能への不満や、ワイヤレスキーボードにポイティングデバイスのTrackPointがないこと、スタンドで縦向きに立てられないことなどについて、要望が寄せられたという。そこで第2世代となる製品開発にあたって、処理性能の強化、フルサイズキーボードとTrackPointの搭載、大画面と携帯性の両立を目指した。

開発で特に力を入れたのが、大型で、折り畳むとコンパクトになる、フレキシブルな有機ELディスプレーだ。初代モデル搭載のディスプレーは、折り畳むと向かい合ったディスプレーの間にすき間ができ、横から見るとU字型になった。そのすき間にワイヤレスキーボードを挟んで持ち運べる仕様だった。

新型モデルはそうしたすき間がなく、ぴったりと閉じることができる。折り畳んだときに曲がる部分はヒンジ部分に収まっていて、外観上は完全に折り曲げたように見える。このディスプレーは、シャープディスプレイテクノロジー(SDTC、三重県亀山市)と共同開発したもので、SDTCではこれを「雫(しずく)型曲げ」と呼んでいる。ヒンジやボディーを開発するレノボ・ジャパンのチームと、技術の擦り合わせをしながら開発したという。

閉じた状態。横から見ると、ディスプレーの間にすき間がなく、完全に折り畳まれたように見える
スタンドとキーボードの上に、半分に折り畳んで閉じた本体を重ねた状態。この状態でコンパクトに持ち運べる。ペンはマグネットで本体側面に取り付けられる

使い勝手と“ThinkPadらしさ”が向上

専用のスタンドとワイヤレスキーボードも大きく変わっている。初代モデルは、本体裏側のカバーの一部が折り曲がってスタンドになる仕様だった。横向きに開いた状態で自立できたが、ディスプレーの角度は固定で、縦向きにすると不安定で立てられなかった。新型モデルではスタンドを分離し、縦向きでも横向きでも立てられるようになったほか、角度調整もできるようになった。

Bluetooth接続のワイヤレスキーボードには、ThinkPadシリーズの特徴的なポインティングデバイスであるTrackPointが付いた。キーボードの中央にある赤いボタン型のデバイスで、指先で押すとその向きにマウスカーソルを動かせる。初代モデルのワイヤレスキーボードにはなかったもので、ユーザーから要望が多かったという。デザイン的に見ても、赤いTrackPointが付いたことで“ThinkPadらしさ”がぐっと増している。

スタンドとワイヤレスキーボード。キーボードのTrackPointがThinkPadらしさを醸し出している

初代モデルはアーリーアダプター層やエグゼクティブ層に人気があったという。新型ThinkPad X1 Foldは大画面化して実用性が増し、さらにワイヤレスキーボードにTrackPointが付くなどThinkPadらしさも増している。レノボオンラインストアでの最小構成価格は54万2300円で、パソコンとしてはかなり高額な製品だが、従来モデルのユーザー層に加えて、ThinkPadのファンや実用的なモバイルパソコンを求める人にも人気が広がりそうだ。

ブックスタイルにすると、大画面で電子書籍を読むのによさそうだ

(ライター 湯浅英夫、写真 湯浅英夫)

[日経クロストレンド 2022年10月17日の記事を再構成]

「ヒットを狙え」の記事一覧はこちら

「マーケ・デジタル戦略」が分かるデジタルメディア、日経クロストレンド

「日経クロストレンド」では「P&Gマフィア」「AIを使ったリアル店舗の逆襲」「クルマ・鉄道を変えるモビリティ革命『MaaS』」「中国ネット企業の実情」など、次の時代を予見するマーケティング・デジタル戦略の特集記事を毎月たっぷりお届け。マーケ担当者に加えて、経営者・役員やIT担当者など、幅広い層に読んでいただいています。