胆汁は、胆のうに蓄えられているうちに濃縮する。胃で消化された食べ物が十二指腸に入ると、胆のうが収縮し、胆汁が胆管を通って十二指腸に分泌され、脂肪分の分解を助ける。
「胆石ができる仕組みには、胆汁が深く関わっています。胆汁にはコレステロールや、黄色っぽい色素であるビリルビンが含まれています。これらは水に溶けにくい成分なので、通常は水に溶けやすい成分である胆汁酸と結合し、胆汁の中に溶けていますが、何らかの原因で胆汁酸と結合せず、結晶として固まってしまうと胆石になります」(森氏)
それでは、なぜ胆石によって猛烈な痛みが起きるのだろうか?
「痛みを伴う発作が起きるのは、胆のうが収縮する際に、胆道の狭い場所に石がひっかかった場合です。胆のう内で圧力が高くなると、脂汗が出るような激しい痛みがみぞおちあたりに起きます。胆汁の成分が胆のうや胆管を傷つけたり、そこに細菌の感染が加わることで炎症が起きます。また、胆汁に含まれるビリルビンが十二指腸に排出されず、血液中に流れ出ることで皮膚が黄色くなる『黄疸(おうだん)』の症状が出ることもあります」(森氏)

実は、胆石を持っているものの痛みが出ない人もいるのだという。
「胆石を持っているのは、日本の全人口(成人)の12%程度、約8人に1人だといわれています。しかし、そのうち約3人に2人は症状がありません。たまたま人間ドックの腹部超音波(エコー)検査で胆石が見つかることも少なくないのです。痛みがなければ治療の必要はなく、放置してもかまいません」(森氏)
森氏によると、一度でも胆石の発作が起きると、1年以内に57%、2年後に80%の確率で再発するという。何と恐ろしい……。
即席めんばかり食べると「白い胆石」ができる!
先ほど紹介した胆のう摘出手術をした酒豪2人は、どちらとも胆石の発作があったという。彼らの話を聞くと、摘出した胆石の色がそれぞれ微妙に違っていた。胆石に種類はあるのだろうか。
「胆石の種類は大きく2つに分けられます。1つは、胆汁のコレステロールが増え過ぎてできる『コレステロール胆石』で、主に黄白色をしています。もう1つは、色素のビリルビンがカルシウムとともに固まった『ビリルビン胆石』で、茶色、または黒っぽい色をしています。これは、胆汁の流れが悪かったり、胆道に細菌感染があるとできます。現在、日本人の胆石は、食の欧米化が進んだ影響で、圧倒的にコレステロール胆石が多くなっています」(森氏)
ほぼコレステロールだけでできる胆石は白に近くなるが、ビリルビンが2割程度含まれる「混合石」になると茶褐色になるという。また、コレステロールとビリルビンが時間をたがえそれぞれ層を成して固まった「混成石」もある。
胆石にこんなに種類があるとは、恥ずかしながら全く知らなかった。しかし、気になるのが「コレステロール」という言葉。やはりコレステロールの多い酒のつまみが胆石の原因になっているのでは……?
「かつては、コレステロールが多い卵や筋子を食べると血中や胆汁のコレステロールが増えるといわれていましたが、そうではないことが分かってきました。というのも、体内のコレステロールのうち、食事由来なのは3分の1程度で、残りの3分の2は体内で合成されているのです。そのため、コレステロールの多い食品をとっても、胆汁内のコレステロール濃度はそれほど影響を受けないのです」(森氏)
卵や筋子を食べてもあまり影響を受けないというのはうれしいが、別の食品がトリガーとなってコレステロール胆石のリスクを上げるという。
「それは、でんぷん質[注1]を多く含む即席めんです。そのため、白に近いコレステロール胆石を別名『カップラーメン胆石』などと呼んだりします。でんぷん質を過剰に摂取すると、詳しいメカニズムは分かっていないのですが、血液中のコレステロール値が下がり、肝臓で『コレステロールを作りなさい』というスイッチが入ります。肝臓で生成されたコレステロールは血液だけでなく胆汁にも流れ込み、その結果として、胆汁内のコレステロール濃度が上がり、胆石ができやすくなるのです」(森氏)
[注1]食物に含まれる「炭水化物」のうち、食物繊維を除いたものを「糖質」といい、糖質はさらに、ブドウ糖や果糖などの「糖類」と、糖類以外の糖質に分けられる。この糖類以外の糖質のほとんどが「でんぷん質」であり、糖類がたくさんくっついて鎖状になったものだ。即席めんに使われるでんぷん質は、さつまいもなどを原材料として作られる。