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胆石による発作は、右脇腹やみぞおちに激しい痛みを引き起こす(写真はイメージ=PIXTA)

アルコールは胆石の直接的な原因ではない

即席めんばかり食べるような偏った食事をしているとコレステロール胆石ができやすくなることが分かった。ほかに胆石ができやすくなる原因はあるのだろうか。

「1つは、ダイエットなどで食事の回数が極端に少なくなること。胆のうは食事をするときに収縮し、ためられた胆汁を分泌します。しかし、食べ物が入ってこないと胆のうが収縮する回数が減り、胆のう内に胆汁が長くとどまることで、コレステロール胆石ができやすくなります。もう1つは経口避妊薬(ピル)です。薬に含まれる女性ホルモン(エストロゲン)が、胆汁内のコレステロールを増やし、胆石を誘引すると考えられています。ほかにも、肥満や加齢なども関係しています」(森氏)

それでは、胆石ができやすいのはどのような人だろうか。

「昔は、胆石ができやすい人の条件として、Fatty(肥満)、Forty(40代)、Female(女性)、Fecund(多産)、Fair(白人)の頭文字を取って『5F』などといわれていました。幾分、語呂合わせのようなものですが。現在の日本では、男性の罹患(りかん)率が高くなっています。特に60代以降の男性に多い傾向にあります」(森氏)

「なるほど」と深くうなずきつつ、ふと肝心なことに気づく。それは、胆石になりやすい人の特徴として、「酒をよく飲む」が入っていないことだ。

「アルコールは、胆石の直接的な原因にはなりません。ただし、お酒の飲み過ぎ、おつまみのとりすぎによる肥満や、脂肪肝によって、胆汁内のコレステロールが増え、胆石を引き起こすこともあります。また、お酒を飲んだ翌日、ひどい二日酔いになって食事をとらない人がいますが、それも胆石を招く可能性があります。食事をとらないことで、胆のうの収縮回数が減ってしまうからです」(森氏)

なるほど。酒は直接の原因にはならないが、間接的な原因になる可能性はあるようだ。言われてみると、胆のう摘出手術をした2人は、やや肥満気味。締めに食べたラーメンの写真をSNSによく上げていた。

胆石の予防にいいおつまみがあると最高なのだが……。

「米国の女性看護師およそ8万人を20年間追跡した疫学研究『Nurses' Health Study』では、ピーナツやアーモンドなどをよく食べる女性には、ひどい胆石症に罹患する人が少ないという報告[注2]があります。ナッツに含まれる良質な脂が、胆のうの収縮を促すためと考えられます。ただ、胆石に限らず、『これを食べれば病気を予防できる』という食材はありません。バランスのいい食事を心がけましょう」(森氏)

酒飲みは栄養バランスよりも、ついつい「酒に合うもの」を優先して選んでしまう傾向にある。肝に銘じておかなければ。

[注2] Am J Clin Nutr. 2004;80:76-81.

胆のうを摘出すると胃酸逆流も治まる?

それでは、胆石ができて発作が起きてしまった場合は、どのような治療を受けることになるのだろう?

「軽症であれば、ウルソデオキシコール酸をはじめとする、コレステロール胆石を溶解する薬を飲む薬物療法があります。しかし、度重なる胆石発作を起こしたり、胆のう内に胆石がびっしり詰まっていたり、その影響で胆のう壁が厚くなっていたりする場合は、胆のう摘出手術をお勧めします。胆のうを手術で取っても日常生活に大きな問題はなく、ときどきおなかがゆるくなるくらいです。手術の入院は2~3日と短期で済みます」(森氏)

胆のうを摘出しても、日常生活であまり問題はないとは驚きだ。胆汁は、肝臓から直接、総胆管を通って十二指腸に届くようになる。

森氏によると、「胆のうを手術で取ると、その後は胆管が少し太くなる」という。まさに人体の不思議である。

そういえば、胆のう摘出手術をした知人の男性は「胆のうを取ったら、飲んでも胃もたれをしなくなった」と話していた。

「胆のう内で胆汁の圧力が上がると、胃酸が逆流する症状があり、それが胃もたれや胸焼けにつながります。症状の根源となる胆のうを摘出すると、胃酸の逆流も緩和するというわけです。また、逆流性食道炎と診断された方で、薬を飲んでも症状が改善しない場合に、実は胆石が原因だったということも少なくありません」(森氏)

逆流性食道炎もまた、酒飲みには定番の疾患。「薬が効かない」と思ったら、胆石を疑ったほうがいいようだ。

では、「胆のうがん」と胆石の関係はどうなのだろう?

「残念ながら、胆のうがんと胆石との関係はまだ分かっていません。胆石を放置すると胆のうがんになるというわけではありません。しかし、胆のうがんの患者に胆石が多いという事実はあります。また、世界中で胆のうを摘出した人を調べたデータの中に、『インシデンタル(偶然)胆のうがん』というものがあります。これは、胆石と診断され、手術で胆のうを摘出し、術後に病理検査で調べたら、胆のうがんだったという方が1~2%いたというものです。こうしたことを考えると、胆のうがんと胆石に全く関係がないとは言えないかもしれません」(森氏)

すでに胆石と診断され、胆のうがんが気になる人は、「2年に1回程度、腫瘍マーカーと超音波の検査をお勧めします」と森氏。酒好きで、すでに胆石と診断されている方、また40代を超えた方は、念には念を入れ、胆のうの検査を一考したほうがよさそうだ。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2022年7月7日付記事を再構成]

森俊幸さん
杏林大学肝胆膵外科客員教授、佼成病院外科部長。1980年、東北大学医学部卒業。虎の門病院外科レジデント、東京大学第一外科(現 腫瘍外科・血管外科)、埼玉医科大学川越医療センター救急センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校外科などを経て、1995年、杏林大学外科教授。2021年より現職。

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著者 : 葉石かおり
出版 : 日経BP
価格 : 1,650円(税込み)

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