鶏だけではない。一般的なラーメン店であれば何げなく使ってしまいがちな昆布についても、和食で培った知識を総動員し、北海道の日高産と羅臼(らうす)産の2種類を縦横無尽に使いこなす。「ビビッドなうま味が表現できる羅臼昆布は、『中華そば』のスープに最適です。他方、『つけ麺』の麺を浸す出汁(ダシ)は、日高昆布と羅臼昆布を1対1の割合で使っています。昆布水でなく日本料理の出汁という認識なので、過度なうま味の演出は避けたかったのです」と田中氏は明かす。

東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅からも徒歩2分程度の場所にあるロビンソン

昆布だけでも、ここまで熟考した上で使っているのだから、脱帽するほかない。もちろん、それ以外の素材の使い方も堂に入っている。カツオ節、サバ節、イリコ、平子干しといった乾物の滋味も、鶏のうま味とコクをクッキリと描き出す触媒としての役割を見事に全うしている。

味覚中枢を乱舞させる至高の味わい

複数の素材の滋味が味蕾(みらい)の上で重なり合い、味覚中枢を狂喜乱舞させる至高の味わい。スープをすすりながら「食べ手を一瞬で納得させる上質なうま味とは、このようなものを指すのだな」と改めて思い知らされた。

このスープに合わせるのが、熟成を加えない打ちたての自家製麺。開業前から「ラーメン店に挑戦するのであれば、麺は自家製で」と決めていたという。製麺所への発注は全く視野に入れておらず、製麺機が店に届く前は、製麺機の購入元である『大和製作所』のキッチンを借り、ひたすら麺を試作する毎日だったそうだ。

「熟成させた方が、麺にコシが生まれ、切れにくくなることは分かっていましたが、あえて『打ちたて』にこだわりました。小麦の芳醇(ほうじゅん)な香りを極限まで表現したくて」

北海道産の小麦「春よ恋」「ゆめちから」に加え、モッチリ感を出すため、少量のもち小麦(「もち姫」)をブレンドし、7回圧縮した麺は、箸でつまんだ瞬間から、大地の香りがほとばしるこん身の仕上がり。現在、「手もみ平打ち麺」「中太縮れ麺」「細ストレート麺」の3種類を用意。「中華そば」は好みに応じて「手もみ平打ち麺」と「中太縮れ麺」のいずれかを選択でき、「つけ麺」にはすすりやすさを考慮し「細ストレート麺」を使用する。

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明確な理想像を抱き、具現化