太田 イタリアの中でも屈指のクオリティーと評判ですよね。
中村 価格的には高い部類に入りますが、作りは申し分ないですね。
小曽根 ピッティでオーナーのエンリコさんをはじめ、ボメザドリ・ファミリーと何度か食事をしたことがありますが、みなさん本当に誠実で、温かい人たちですよね。それが作りの実直さにも表れていると思います。今後も期待したいですね。
「軽さと端正さのバランスが絶妙」ー平澤
■LARDINI=左
ラルディーニの3ピーススーツ
薄手の肩パッドや半毛芯仕立てなど、構築美と軽快さをバランスよく両立させた一着。主張が強すぎないチョークストライプはビジネス使いにもぴったりだ。別売で共生地のベストも展開し、スリーピースとしても着こなせる。スーツ16万5000円、ベスト4万2900円(トヨダトレーディング プレスルーム)
「 襟〜裾の『6の字』が美麗」ー中村さん
■DE PETRILLO=右
デ ペトリロの「ナポリ」
ナポリらしい柔らかな仕立てをベースにしつつ、モダンな印象も薫らせる「ナポリ」モデル。ピッチを広くとったチョークストライプがさりげない個性を発揮している。秋冬らしい微起毛ウールは程よいスポーティー感も備え、タートルニットなどでドレスダウンしても小粋だ。19万2500円(伊勢丹新宿店)

平澤 クラシックスーツ大賞、続いてはナポリのデ ペトリロです。
中村 ここはラペルからフロントカットにかけてのつながりがきれいです。「6の字」と言ったりしますが、ラペルの先から裾まで、美しいカーブを描きながらつながるラインはスーツのエレガンスを表現するための重要なポイントなんです。
太田 背中に対して、前身頃がやや小さめに設計されていますね。ナポリブランドにはこういう作りをしているところがいくつかあります。
平澤 ピッティに行くと必ずブースをチェックしていますけど、シーズンテーマをしっかり決めて世界観を打ち出しているのも印象的ですね。続いては、ラルディーニ。
中村 非常に軽い仕立てなのですが、接着芯ではなく半毛芯なので本格感があります。バランスのよさが大ヒットした秘訣でしょう。
平澤 私もラルディーニを何着か持っていますが、軽快なのにきちんと感もあってとても気に入っています。続いてクラシコイタリア全盛期からの名門イザイアとベルヴェスト。

「国際性が光る古豪三傑」ー太田さん
■PAUL STUART=左
ポール・スチュアートの「ベイカー」
ウールを高密度に打ち込んで光沢感と重厚感を生み出した、カシミヤ織りと呼ばれるタキシードクロスを採用。ピークトラペルともあいまってフォーマル感を感じさせるが、日常のビジネス使いもできる汎用性に優れた一着だ。13万2000円(ポール・スチュアート 青山本店)
■BELVEST=中
ベルヴェストの「A305」
品行方正なクラシックさが魅力の「A305」モデル。オリジナルの芯地を使用した仕立ては、柔らかさと立体感を見事に両立している。クリーンで精緻な仕立てだが堅苦しさとは無縁。“美しい服”というブランド名を体現する王道のたたずまいだ。32万4500円(伊勢丹新宿店)
■ISAIA=右
イザイアの「グレゴリー」
15年以上のロングセラーを誇る「グレゴリー」。柔らかなナポリ仕立てをベースとしつつ、肩にはパッドを入れて風格を高めている。生地は糸段階から撥(はっ)水加工を施し、ナチュラルストレッチ性ももたせた「アクアスパイダー」。33万円(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン)

太田 イザイアはナポリを本拠としていますが、いわゆるナポリスーツとは一線を画していますね。アメリカなどのマーケットも意識した、インターナショナルな打ち出しです。
中村 ベルヴェストも同様ですね。インターナショナルなエグゼクティブが好むスーツという感じです。両者で違うのは、イザイアが独特の色気を感じさせるのに対して、ベルヴェストは控えめな気品を漂わせているところでしょうか。
平澤 それでは、お国が変わってポール・スチュアート。こちらも老舗ですが、鴨志田さんがディレクターになってイメージが変わりました。
中村 この四角いポケットが米国的な印象ですね。鴨志田さん的にアメリカン・クラシックを解釈して、現代のスーツとして表現しているのでしょう。そのあたりの背景を理解して着ると、より楽しめそうですね。
「ナポリの新鋭も急伸」ー太田さん
■TITO ALLEGRETTO=左
ティト アレグレットの千鳥格子スーツ
ルビナッチに勤めたのちナポリの一流ブランドでビジュアル・マーチャンダイザーを担当してきたアレグレット氏によるブランド。ポケットの下まで通したフロントダーツや雨降り袖など、ナポリの注文服的意匠がふんだんに盛り込まれている。16万9400円(エストネーション)
■CANALI=中
カナーリのダブルスーツ
1934年創業の老舗で、日本でも古くから親しまれてきた名門ブランド。仕立てもさることながら洒脱(しゃだつ)な生地表現も魅力で、こちらはグレンチェックにブルーペーン。控えめでありながらモダンなムードが薫り、若々しさも備えたダブルスーツだ。35万2000円(コロネット)
■BOGLIOLI=右
ボリオリの「ドーヴァー」
2008年に登場し、アンコンジャケットの先駆けとなった「ドーヴァー」。こちらはそのスーツで、ジャケット同様に快適な着心地。生地も軽量な目付け240gのフラノを使用している。'19年にはラペル幅を広げ、着丈をやや短くしてアップデートを果たした。17万6000円(三崎商事)

平澤 アンコンの火付け役となったボリオリはどう評価されますか?
太田 非常に軽く柔らかいのですが、作りはしっかりしていますね。
中村 もともとはフル毛芯の伝統的スーツを作っていたので、その素地が生かされているのでしょう。
小曽根 では、古参のカナーリはいかがですか?
中村 意外とゆったりしたフィッティングなんですね。でも襟のラインがきれいですし、ゴージが低めなのもクラシックな雰囲気だと思います。
太田 ここも昔からしっかりした服作りをしていますよね。
平澤 ナポリの新鋭、ティトも最近、注目度が高まっています。
中村 ナポリサルトの雰囲気をうまく表現しています。フロントダーツを裾まで通すのも、既製服工場でやるのは難しいんですよね。
太田 土着的なナポリテイストが好きな方にとっては、大変リーズナブルに感じられると思います。

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