率先した導入で「先行者利益」も

――最近、週休3日制の導入を表明したり、検討したりする企業が増えている理由は。

「まだ導入している企業が少ないので希少性が高い施策です。いち早く導入することによる、いわば先行者利益のようなものがあり、人材獲得や定着につなげられます。週休3日制を導入している企業は『ほかにも働き方に関して様々な工夫をしているのでは?』と、就職・転職希望者や世間の注目を集めることができます。新型コロナウイルス感染症の拡大前であれば『リモートワーク』がそれにあたりましたが、リモートが普及した今となっては特別目立つ施策とは言いづらくなっています」

週休3日制について語るリクルートマネジメントソリューションズの武藤久美子さん

「先進的な施策にはよくあることですが、導入すること自体に意味があると考え、導入することのほうが先行して後から目的を持たせる企業もあります。導入のインパクトが大きいので、それも悪いことではありません」

「リスキリングや学び直しの推進と結びつけられることも多いです。目まぐるしく変化する社会のなかで活躍し続けることができるよう、“3日目”の休みを使って新たなスキルの獲得に努めましょうというものです。企業は社内インターン、副業、社会人大学院など組織の境界線を越え、他部署や社外とつながる様々な活動を奨励しやすくなります。ただ働く側にとっては、休日も常に頑張っていないといけないのかと休日の使い方も会社に指定されているような気持ちになり、窮屈さを感じる人もいるかもしれません」

――週休3日制については、前向きに捉える意見やそうでない意見、様々なものがあるようです。

「たしかに、必ずしもポジティブな反応だけではありません。導入が難しい企業や、同じ社内でも週休3日制を選択しづらい職種の人がいたら不公平感が生じる可能性もあります。まずは年次有給休暇を気兼ねなく取得できる環境を整えるべきではないかと考える人もいます。週休3日制を選ばない人の仕事の負担が増すのではないか、顧客に迷惑をかけるのではないかといった懸念の声が出るのも、もっともなことです」

「そもそもこの議論自体が時間に捉われており、期待される成果を出せば労働時間は短くても問題ないと考えるほうがいいのではないかという意見もあります。週休3日制が導入・検討されている企業では、既に残業時間を抑える工夫など働き方改革が進められていることが多いです。そこへさらに週休3日制の導入となると、自身も変化していかないといけないというメッセージを感じたり、慣れた環境が変わることへの不安を感じたりする人もいるでしょう」

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リモートワークほど普及はしない可能性