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筋肉の合成が高まるのは筋トレの直後で、その後、合成率がだんだんと下がっていく。先ほどの研究も、2~8時間後の合成率について調べたものだ。そのため、十分に時間を空けて、少なめの量のアルコールを飲む分には、影響は少ないのではないか、というわけだ。

「それから、お酒の種類はあまり関係なく、トータルのアルコールの量が問題になります。ですので、ワインのように、食事とともにゆっくり飲めるお酒か、低アルコールのお酒を選ぶようにするといいと思います。血中のアルコール濃度が急に上がらないようにするのがポイントです」(藤田さん)

朝筋トレ、夜ビール1缶

明確なエビデンスはないにせよ、「十分に時間をあけて、350mLのビール1~2缶なら許容範囲」と考えると、筋トレラブの酒好きとしては、ちょっとホッとする。ホッとしたところで、藤田さんに気になる質問をひとつ。先生ご自身は筋トレ後にお酒を飲むのでしょうか?

「来ましたね、その質問が(笑)。僕は朝トレーニングして、夜にほぼ毎晩ビールを1缶(350mL)飲んでいます。自宅ではこれ以上飲みません。先ほども言ったように、筋トレ後の筋肉の合成のピークが1~2時間後なので、十分に時間をあけるとなると、夜にお酒を飲むのであれば朝に筋トレを行うのが効率的ではないかと思います」(藤田さん)

朝筋トレ! これは良さそうだ。オンライン取材で、パソコンの画面越しでも分かる引き締まった藤田さんの姿を見ると、説得力大である。

夜にビール1缶を飲むとのことだが、ほかに飲み方で気をつけていることはあるのだろうか。

「注意しているのは空腹で飲まないということです。体内におけるアルコールの吸収を緩やかにし、血中アルコール濃度を急激に上げないようにするためです」(藤田さん)

血中アルコール濃度が急激に上がってしまうと、悪酔いしたり、たががはずれて、つい飲み過ぎたりしてしまう。それで翌日、二日酔いになってしまったら、朝の筋トレにも影響を及ぼすかもしれない。

早速、私も朝筋トレを実践したい。ただひとつ気になるのが、1日のうち筋トレに適した時間帯というのはないのだろうか。例えば、朝より夕方に行ったほうが効果が大きいなら、迷うところだ。

「筋肉合成という観点からは、筋トレを行う時間帯による差は少ないと考えられます。ただ、血圧が高い人は、朝から激しい筋トレを行うと血圧が上がり過ぎて、脳心血管系の疾患のリスクが上がるかもしれないので注意が必要です」(藤田さん)

最後になるが、筋トレで何より大事なのは「継続」だ。自分が習慣化して続けられる筋トレのルーティーンを確立しつつ、酒で筋トレ効果を台無しにしないように注意しよう。

名医が教える飲酒の科学

著者 : 葉石かおり
出版 : 日経BP
価格 : 1,650円(税込み)

葉石かおりさん
酒ジャーナリスト/エッセイスト。1966年東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオリポーター、女性週刊誌の記者を経てエッセイスト・酒ジャーナリストに。「酒と健康」「酒と料理のペアリング」を核に執筆・講演活動を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外で日本酒の伝道師SAKE EXPERTを育成する。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』『日本酒のおいしさのヒミツがよくわかる本』ほか多数。

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