メニューや外食、関連グッズに広がり

シューマイに絶対的な強みを持つ崎陽軒だが、メニューの拡張にもぬかりはない。満を辞して21年に投入したのは、冷凍タイプの「ギヨウザ」。崎陽軒らしさを感じさせるのは、看板商品「昔ながらのシウマイ」の製造ノウハウを生かし、保存料や化学調味料を使っていないところ。焼き、蒸し、スープなど、好みの食べ方を選んで調理できる点は家庭での使い勝手を高めている。「これまでのノウハウを注ぎ込んで、オリジナルのギョーザに仕上げた」(野並社長)。

国産の豚肉とオホーツク海産の干ホタテ貝柱を使っているのはシューマイ譲りのこだわりだ。一般的な表記の「餃子」「ギョーザ」ではなく、「ギヨウザ」と銘打ったのも「シウマイ」にならった。「シューマイもギョーザも、主に小麦粉で練った皮で具材を包むダンプリングの仲間。崎陽軒の長い経験が生かせると考えた」(野並社長)。

横浜中華街の「シウマイBAR(バル)」

外食事業でも接点を広げてきた。JR東京駅八重洲口地下の東京駅一番街にオープンした「シウマイBAR(バル)」は各種のシューマイをつまみにビールを味わえる新業態だ。「新幹線の待ち時間に小腹を満たしてもらいやすい。店内では弁当も扱っているので、おみやげ買いにも使ってもらえる」(野並社長)と見込む。2号店も横浜中華街にオープンした。崎陽軒本店と戸塚崎陽軒(横浜市)で営む「イルサッジオ」は南イタリア料理で、「嘉宮」は広東料理。そのほかに中華食堂も手がけている。

近年、崎陽軒のファンを増やしたのは、雑貨系の関連グッズだ。クッションや腹巻き、半天など、種類は豊富。共通しているのは、弁当のパッケージやロゴが大胆にあしらわれているところ。「ここまでやるかというぐらいに印象的なデザインを目指した」(野並社長)。クッションは裏面に弁当の実物写真をプリント。枕も「昔ながらのシウマイ 15個入」の見た目を徹底的に再現して、ファン心をくすぐった。

ひょうたん形しょうゆ入れの「ひょうちゃん」

ファンの多い、マスコット的なキャラクターがひょうたん形しょうゆ入れの「ひょうちゃん」だ。かつては絵柄のない白い磁器だったが、「フクちゃん」で知られる漫画家・横山隆一が1955年に「目鼻をつけてあげよう」と、表情を描き入れた。いろは48文字にちなんで48種類のバリエーションが用意され、ひょうたん形にちなんで横山が自ら「ひょうちゃん」と名付けた。今も「昔ながらのシウマイ」「特製シウマイ」の箱に入っていて、食べる人の気持ちをなごませている。

コロナ禍は食のビジネスを揺さぶったが、崎陽軒にとっては「お客様とのつながりを再確認するきっかけにもなった」(野並社長)。郊外のロードサイド店舗にも来店者が増える傾向にあり、「さらにロードサイド店舗を増やしていきたい」と、野並社長は伸びしろを感じ取る。

冷めても味が落ちにくく、ランチにも夕食にも使えて、さらに小腹対策にも向く。こんな使い勝手にすぐれた崎陽軒のシューマイは、横浜を地盤に、首都圏で着実にファンの裾野を広げてきた。全国ブランドは目指さない崎陽軒だが、地元の横浜にとどまらない「首都圏の愛着フード」としての居場所にはもう手が届きつつあるようだ。