「戻ってきた官僚」 霞が関のモヤモヤ解消に一役

経産省にデータサイエンティストとして採用された浅見さん

2021年9月、経済産業省にデータサイエンティストとして採用された浅見正洋さん(36)。実は10年前に法務省に入省した元キャリア官僚。その後、民間企業4社を渡り歩き、データ分析の専門家として腕を磨いた。官僚離れが進む中、なぜ霞が関に戻ってきたのか。

やり残した宿題 科学的根拠に基づく政策立案

「大げさに言えば、世直しのためのお役に立ちたいと。法務省の新人時代は何もできなかったし、何も言えなかった。しかし、データサイエンスの分野でキャリアを積み、少しは自信もついた。やり残した宿題をやるためにもう一度、霞が関に来たわけです」。浅見さんはこう語る。

浅見さんの経産省でのミッションとは何なのか。新型コロナウイルス感染対策で、政府内で改めてクローズアップされているのが「EBPM」と呼ばれるエビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案だ。もともと各省庁は政策を立案し、予算を獲得する際も、客観的なデータに基づくエビデンスという概念が欠けていた。有力政治家が推す事業が優先され、予算執行後も効果検証が曖昧なケースが少なくない。しかし、バイデン政権など米欧の政府はEBPM推進に舵(かじ)を切っている。財政難の中、日本もEBPM推進が求められるようになった。

霞が関の新規政策・企画の司令塔と言われる経産省。情報プロジェクト室を立ち上げ、外部からデジタル人材を次々と採用しているが、新たに白羽の矢が立ったのが浅見さんだった。霞が関のデータサイエンティストはどのようにして誕生したのか。

東京で生まれ育ったが、小中高と空手に明け暮れ、「将来は空手の先生になるつもりで、大学に行く気もなかった」という。しかし、都内の公立高校に通っている頃、政治や哲学に興味を抱くようになった。だが、大学受験で合格したのは理系学部(数学専攻)のみだった。「数学は得意だったけれど、歴史や古文などの暗記科目は全然駄目。ただ、どうしても哲学や社会学をやりたいと思い、浪人して早稲田大学の社会科学部に入学した」と話す。理系から社学に「文転」するのは珍しい。

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「文転」「理転」後、法務省へ
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