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[タイプ3]過去の作品のアップデート:20作

発売年は、最初にその原型が発売された年。このタイプはすべて発売年が5年以上前の作品だった。調査期間、ベテランの定義はタイプ1を参照

そして、今回最も多かったのが、最新技術によるリマスタリングでの発売や、CDからアナログ、またはアナログからCDといった記録媒体の変化など、過去の作品をアップデートしたタイプのヒットだ。その中から、この週に発売されたスピッツ、ZARD、西城秀樹という3組に注目してみる。

まず、スピッツは、シングルのカップリングやカバー曲などを収録し1999年、2004年、2012年の3作にわたって発売した企画アルバムの最新リマスタリングによるアナログ盤がランクイン。特に、2位の『花鳥風月+』は、『花鳥風月』にインディーズ時代の楽曲を4曲追加し、CDでも発売したことで、より大きなヒットとなった。

ZARDは、デビュー30周年記念として11作のオリジナル・アルバムをリマスタリングCDで再発売し、このうち7作がTOP100入り。中でも、9thアルバムの『時間(とき)の翼』は、全曲の編曲をし直したことで再購入したファンも多いようだ。なお、これらのCDが発売された9月15日は全曲がサブスク解禁となって、こちらも大きな話題となった。特に、エールソングとして小中学生にまで浸透している「負けないで」は、今後サブスクで更にヒットを拡大しそうだ。

西城秀樹は、デビュー50年目となる2021年、アナログ盤で発売していたオリジナル・アルバムを、最新リマスタリングの紙ジャケットCDで発売している。6月に第1弾として5作品、この9月に第2弾として6作品を発売し、いずれもアルバムチャートでTOP100入りを果たしている。第2弾のうち、最も高ランクとなった『ファーストフライト』では、11曲中6曲を、西城秀樹自らが作曲している。10月にはBSにて特別番組が放送され、ベストCDやシングル曲のダウンロードも大きく再浮上。本人は2018年に逝去しているが、名曲や名盤は語り継がれているというわけだ。ちなみに、ヒデキの妹分としてデビューした河合奈保子のオリジナル盤も、超高音質のハイブリッドSACDとして8作品が2021年に発売となる。

西城秀樹1978年のアルバム『ファーストフライト』。デビュー50周年を迎え紙ジャケットで復刻

他にも、山下達郎の『ARTISAN』の発売30周年記念盤や、大滝詠一の『A LONG VACATION』の発売40周年記念盤などもランクイン。総じて、デビュー○周年や、発売○周年といった記念作品のヒットが多く、ベテラン勢が記念イヤーに精力的に活動するのも肯ける。

このように、ベテラン勢は、ソングチャートでは目立たないものの、CDやダウンロードのヒットによってアルバムチャートでは活発な動きが読み取れる。「最近は知らない曲ばかりがヒットしている」とお嘆きの方は、アルバムチャートをチェックすれば、新しい作品も懐かしい作品も、より前向きに楽しめるのではないだろうか。

臼井孝
1968年生まれ。理系人生から急転し、音楽マーケッターとして音楽市場分析のほか、各媒体でのヒット解説、ラジオ出演、配信サイトの選曲(プレイリスト【おとラボ】)を手がける。音楽を“聴く/聴かない”“買う/買わない”の境界を読み解くのが趣味。著書に「記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝」(いそっぷ社)。渋谷のラジオにてレギュラー番組『渋谷のザ・ベストテン』放送中。 Twitter @t2umusic