がんや認知症を「体液」で発見 広がる検査サービス

東芝が開発した血液によるがん検査用チップ

がんや認知症などの病気の有無や生活習慣病のリスクを、微量の血液や尿など人の「体液」から判断する手法が広がっています。血液中の遺伝物質を調べるなど新しい技術が応用され、尿の匂いからがんを発見するといった手法も登場しました。得られた個人の健康リスク情報をもとに生活習慣の改善を支援するビジネスも生まれています。

体液からの病気の診断で今注目されているのは、血液からマイクロRNA(リボ核酸)という病気と関連した遺伝物質を見つける方法です。東芝は今年、東京医科大学などとの研究成果をもとに、膵臓(すいぞう)がんなど13種類のがんを早期発見する実証研究を、東京ミッドタウンクリニック(東京・港)などの医療機関と開始しました。

広島大学発スタートアップのミルテル(広島市)は、血液中のマイクロRNAを手がかりに14種類のがんとアルツハイマー病の早期発見に対応する「ミアテスト」を医療機関を通じて実施しています。「従来の腫瘍マーカーと比べマイクロRNAはがんの早いステージで増え、早期発見が可能」(同社)といいます。

血液や尿など体液から細胞や遺伝子など検査試料を得ることを「リキッドバイオプシー」と呼びます。がんなど病巣の組織を採取する生体組織診断と比較して、被検者の身体の負担が少ないのが利点です。

体液を使うユニークな手法としては、がん患者の尿の臭いに線虫が集まる性質を利用して、がんを調べるものがあります。HIROTSUバイオサイエンス(東京・千代田)は早期発見が難しい膵臓がんの早期発見検査を、2022年にも始めます。

日本で19年に本格的に始まった「がんゲノム医療」では、患者のがん関連遺伝子を複数同時に調べる「遺伝子パネル検査」が行われますが、ここでも今年8月、血液を使った検査が登場しました。中外製薬の「ファウンデーションワン・リキッド」で、がんに関連した300以上の遺伝子を調べることができます。

米国で解析されている中外製薬のがんゲノム医療・遺伝子検査=米ファウンデーションメディシン提供(ジョン・チョーミッツ氏撮影)

血液からの病気のリスク判定結果を、ユーザーの健康づくりの支援に使う動きも出ています。味の素は血中のアミノ酸バランスを基に、がんや認知症、生活習慣病のリスクを判定する「アミノインデックス」のデータを活用したサービスを4月に始めました。スマートフォンアプリと連動させ、食生活や運動習慣などをアドバイスするほか、チャットで病気や健康について医師に相談できます。

血液や尿といった体液は以前から健康診断などに使われてきましたが、技術の進展とともにサンプルから豊富な情報が得られるようになり、活用法が拡大しています。将来は血液などから全ゲノム情報が得られ、これを活用した本格的なゲノム医療や、医療・健康サービスが生まれると予想されています。

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