デジタル社会がなせるワザ
QRコードでアクセスした情報によると、コレクション 242には秘伝のタレが34%もブレンドされ、リザーブワインも10%入っている。これだけの情報で、このシャンパンの味わいがかなり複雑であることや、なぜ複雑な味わいなのかも推察できる。ボトルのラベルのスペースはかなり限られているので、詳しい情報をすべてラベルに載せることは事実上、不可能だ。
もともと、生産者の多くはホームページ上で商品に関する詳しい情報を公開している。しかし、モバイル端末もQRコードもなかった時代は、店頭などで、そうした情報に瞬時にアクセスするのは難しかった。それを可能にしたのが、デジタル技術の進化である。ルイ・ロデレールのマーケティング部長セドリック・プティさんは、「現時点では、シャンパンの生産者でQRコードを採用している生産者はまだ少ないが、今後はより多くの生産者が導入する可能性がある」と話す。
国内で売られているQRコード付きのワインをざっと調べたところ、生産者のサイトに飛ぶものと、輸入業者のサイトに飛ぶものと、2種類あることがわかった。輸入ワインの場合、生産者のサイトは基本、ルイ・ロデレールのように英語かフランス語など現地の言語なので、日本人にはやや不親切に映る。一方、輸入業者のサイトなら日本語なのでよりわかりやすい。

例えば、フランス・ロワール地方の自然派の生産者セバスチャン・リフォーのボトルのQRコードをスキャンすると、輸入業者ディオニー(京都市)のサイト内ページに飛ぶ。
そこには造り手の全般的な紹介に加え、個々の商品のブドウ品種から発酵・熟成の方法、味わいの特徴まで、様々な情報がコンパクトにまとめられている。ヨーロッパの伝統的なワイン産地はラベルに品種名を明記しないのが普通なので、品種情報は有益だ。また、自然派ワインを買う時に気になる酸化防止剤の使用についても、「トータル:10mg/L未満」などと具体的な数字が出ていて、参考になる。
ディオニーもホームページでは以前から詳しい情報を載せていた。同社輸入部門マネージャーの玉城寛樹さんによると、QRコードは、昨年の5月以降に輸入された分から徐々に付け始め、今はほぼすべての輸入ワインに付けている。その理由を玉城さんは、「消費者が購入する際に詳しい情報にアクセスできると便利だし、飲みながら情報に触れてもらうことで、会話にも花が咲く。お気に入りの1本と出合えた時に、記憶にとどめる一助になればと考えた」と説明する。