大上段に構えすぎるとそもそも取り組めない

DXのためのリスキリングとなると、たとえばプログラミングやAI活用についての学習だ、と思われがちです。

そのためには、会社全体としてしっかり取り組むことが有効だ、と多くのコンサルタントたちが提唱しています。

まず会社全体としてのDX戦略を定め、あるべき人材像に基づいた求められるスキルを定め、現在の一人一人のスキル過不足を判断して適切な学びを与えていくことが重要です。それは確かにその通りです。

年齢別に見てみても、デジタルネーティブと言われる20代が取り組むべき学びなおしと、アナログ気分が残っている50代が取り組むべき学びなおしには違いがあって当然です。

しかしそんな大上段に構えた改革が、はたして変化の激しい今の時代に合致しているのでしょうか。

たとえばRPAブームを思い出してみましょう。ロボティック・プロセス・オートメーションの略語であるRPAは、比較的簡易なプログラミングによって、単純作業の自動化などで生産性を高めようという取り組みでした。多くの会社で効果を発揮している取り組みではありますが、その一方で、プログラミングを学んだものの使う機会すらない、という人も多数生み出しました。

スキル獲得を優先したがために、何のために、という目的がおろそかになってしまう典型例を多数生み出したのです。DXのためのリスキリングも、同じ轍(てつ)を踏む危険性があります。頑張ってスキルを獲得しても、さて何に使えばいいんだろうと立ち止まってしまうことが想定されます。

デジタルスキル獲得ではなく課題解決のためのデジタル化を

DX自体が目的とするところは、ビジネスモデルそのものの大きな変革です。まずアナログありきだった状態から、デジタルが当然の状態に移行する取り組みです。だからこそ経営戦略からの見直しが必要なわけです。そこで求められるスキルは以前とは違うものです。たとえば足を棒にして顧客訪問をしながら進めていた営業から、見込み客のリードリストを分析してマーケティングオートメーション(MA)ツールで自動個別対応によって進める営業に変革する場合など、考え方も行動も全く異なってきます。

ではスキル獲得が先なのか、DXが先なのか。多くの企業で、エンジニア不足が叫ばれ、既存人材へのリスキリングが求められていますが、これは本質から外れています。最初に考えるべきは、何をいつどう変えるのか、という優先課題の明確化です。そしてそのための戦略・企画を進めると同時に、変革後に対応できるゆるやかな意識・スキル変革の順序で進めることが望ましいステップです。

そのように考えてみれば、今あなた自身が会社の中でどんな役割を担っているか。そのことにあわせてリスキリングの優先度が変わってくることがわかります。あなたが戦略・企画の中心になっているか、あるいはそのような活動を期待されるのであれば、ぜひ先進的なITの考え方や、たとえばAIを活用して何ができるのか、という応用判断などを学んでください。最近はそのためのオンライン教育ツールなども多数存在しています。

しかし、戦略・企画系に所属していない場合には、何から始めるべきでしょう。

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