北京五輪感動ドラマ アスリートの言葉が心に響く理由

北京冬季オリンピックでは日本代表選手のパフォーマンスに加え、印象的な言葉が心を打った。カーリング女子のロコ・ソラーレや、フィギュアスケート男子の羽生結弦、スノーボード・ハーフパイプ男子の平野歩夢が名言を残した。私が感銘を受けた言葉を通して、アスリートの発言が感動を誘う理由を考えてみた。

ロコ・ソラーレの各選手は試合中に発した言葉をマイクで拾われていることも手伝って、いくつもの名フレーズが報じられた。チームメートが交わし合う「~ちゃん、ナイスー」の声は氷上なのに心が温まるよう。「天才」「ごめーん」などの言葉もチームワークのよさを印象づけた。

北京冬季五輪ではカーリングからいくつもの名言が生まれた(写真はイメージ) =PIXTA

職場で「天才」は使う機会が少ないかもしれないが、「ナイスー」や「ごめーん」に類した表現は気軽に使えそう。仲間同士の声掛けは頻度が勝負。オフィスで顔を合わせる頻度が下がっている今だからこそ、こまめに交わしたい。

私のお気に入りは、吉田知那美が発した「これはこれで新しい技」。仲間が放ったショットが狙いをはずしたものの、結果オーライとなった際、この言葉を笑顔で言って、チームをなごませた。

ミスや不運すらも、前向きにとらえ直して、みんなの気持ちをポジティブにリセットする。言葉のファインプレーだ。

他人の失敗を責めるのは簡単なことだが、チームの場合、利益をもたらさないことが多い。起きてしまったことを難じても、得られるものが少ないのであれば、最善の方向にねじり返すほうが賢明だ。

しかし、そういった計算ずくの言い回しではなく、ロコ・ソラーレの場合は、仲間を思いやる「素」の気持ちから生まれた言葉と思える。だから、いっそうすがすがしい。

自然なユーモアが備わっているのも、この言葉に好感を覚える理由だ。本来の思い描いた展開ではないという前提を踏まえつつ、偶然のなりゆきを「スポーツって、こういうものだよね」と面白がる気持ちがうかがえる。

しっかりスポーツに打ち込み、スポーツ特有の理不尽さや偶然性を深く知っているからこそ、こういう言葉が即座に出るのだろう。同時に、チームの仲間を常に思いやる意識がヒューマンなぬくもりを寄り添わせているのではなかろうか。

耳には入らなかった、すてきな言葉もあった。藤沢五月が自らを鼓舞するために手に書いていたメッセージがそれだ。「I am a good curler(私は優れたカーリング選手)」「I have confidence!(私には自信がある!)」「Let's have fun!(楽しんでいこう!)」――。海外メディアでも報じられた。

どんなアスリートでも、試合や競技中に気持ちがめげそうになることはある。気落ちしそうになったとき、すぐ頼りにできる「励ましフレーズ」を身近に用意しておくのは、自らを奮い立たせるツールとして有用だ。自分のありようを肯定するような文言にも共感を覚えた。

昔の受験生は机の前の壁に「絶対合格」「必勝」などの標語を張っていたという。だが、藤沢の言葉には、そういった過剰な悲壮感が感じられない。ポジティブな自己肯定感のほうが強く、余計な力みを伴わずに、自分をエンカレッジできそうだ。職場のデスクにはメッセージを掲げにくいかもしれないが、手帳に書き込む手はあるかもしれない。

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羽生結弦流の「グッドルーザー」