
ローソンはダイバーシティ(多様性)推進に積極的な企業だ。2005年から新卒採用で女性の採用を強化し、14年には事業所内保育施設を開設。子の名前入りどら焼き贈呈で祝福するユニークな試みで男性の育休取得にも力を入れ、その取得率は20年度で94%に達した。一連の取り組みにより、経済産業省などが女性の活躍推進で優れた取り組みの上場企業を毎年選ぶ「なでしこ銘柄」には、小売業で最多となる6度選定された。女性社員に占めるワーキングマザー比率は15年度から2割超に。その育休復帰で本社勤務第1号となったのは、今回ご登場いただく山口恭子さんだ。
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仕事はし続けるもの 性差ない採用も入社理由の1つ
――新卒で入ったローソンでは人事畑が長い。事業所内保育施設の開設も担当しダイバーシティの推進役を担った。事業部門を経て、21年3月から子会社のローソン銀行経営管理部シニアマネジャーに。「現職でも、やっていることは人事。ローソンでダイバーシティ推進をやっていたのもあって女性活躍の取り組みもこれからやりたいし、やらなければいけない」と話す。まずは入社当時から振り返ってもらった。
1993年に新卒でローソンに入社しました。コンビニエンスストアは大学生のときにいつも身近にあって、おにぎりやお菓子を買って友達と集まったときなどに使っていたので、すごく親和性がありました。
ローソンは当時から、(補佐的な)一般職と(幹部候補ともなる)総合職に分けて採るといったコース別採用をしていなかった。男女で入り口を分けないフェアな採用がうれしかったのも理由の1つです。新入社員は基本、店舗からキャリアをスタートします。そうした現場感みたいなものも好きだった。
仕事はし続けるものだと思っていました。両親は富山県の出身。私自身も中学で父が東京に転勤するまで富山で過ごしました。周囲には共働き家庭が多く、ご近所も同級生もそれが当たり前のように進学するといった状況だった。ローソンは入り口がフェアだから、結婚しても「寿退社」とかしなくていいのかなと思っていました。
――店舗勤務などを経て結婚し、99年に出産。本社で育休の前例はなかった。育休を申し出た際に職場で驚かれたことも、いまとなっては懐かしい思い出だ。
(育休を)取りますといったら、びっくりされて。「そんなことできるの?」と。当時は20代で給料も少なかった。「保育園て高いっていうじゃない。あなたの給料、ほとんど保育のお金で消えちゃうのに意味があるの?」と心配してくれた方も。
意味があるかどうかも分からないし、保育園に入れるかどうかも分からない。何もよく分からないので「とにかく産んでみます」みたいな感じで。「居ていいですか?」といったら、分かりましたということで……。人事の方も初めてだったから、対応でバタバタされたと思います。
ちょうどその頃、大手メーカーで総合職として働く義姉が育休から職場に復帰した頃でした。義姉の勤め先では(育休復帰が)当たり前だったみたいです。外の会社はそうなっているんだって思って。義姉が「一緒にがんばろうね」と言ってくれたのも支えになりました。