
菓子・スナックにもニンニク旋風は起きている。ニンニク商品に熱心なメーカーの一つがカルビーで、今年だけ見ても「堅あげポテト 待望の香ばしにんにく味」(2月)、「絶品かっぱえびせん 五島灘の塩と揚げにんにく味」「おつまみじゃがりこ にんにく醤油(しょうゆ)から揚げ味」(6月)など、切れ目なくニンニク風味商品を打ち出している。特に、「家飲み需要の増加」を狙い、ビールに合うフレーバーとしてニンニクにフォーカスしている。
コンビニもこの流れを座視してはいない。各社ともニンニクを使用した弁当総菜類を扱うほか、ファミリーマートは「まるでホルモンスナック にんにく塩だれ味」で、つまみ商品にも切り込んでいる。

また、出前館やUber Eatsの出店状況を見ると、取り扱いエリアごとに違いはあるが“ニンニクメニュー専門店”を散見するようになった。内食でも中食でも、ニンニク商品はすっかり定着したようだ。
リンゴのノウハウが青森県をニンニク県に
家庭でのニンニク料理となれば、何も既製品ばかりでなく、生のニンニクを買って来て各種の料理を作って楽しむのもいい。
そこでスーパーの青果コーナーでニンニクを探すと、多くは中国産で、わずかに国産が並んでいる印象がある。実際、統計などの資料に当たってみると、世界のニンニク生産の大半は中国が占めているとあるのだが、青果の卸売市場の統計を見ると、中国産と国産、特に青森県産がおよそ半々のシェアで推移していることが分かる。このほか、EU各国向けに生産を拡大してきたスペインが日本向けの輸出も増やしつつある。スペイン産は特色ある品種に取り組んで特徴を出そうとしているため、スペイン産が増えていけば、さまざまな種類のニンニクが楽しめるようになるかもしれない。
ニンニクといえば夏のスタミナメニュー向きという印象があるが、実は植物としてのニンニクは高温が苦手で冷涼な土地を好む。かといって寒さにも強くはない。世界的に多い中国産と、国産で強いのは青森産というのは、そんなニンニクの特徴に合った気候の地域ということのようだ。

なお、青森県が2020年に発表した「令和元年度青森県産品ベンチマーク調査」によると、青森県産品の認知度はリンゴが最大だが、これに続くのが今やニンニクである。「ニンニクと言えば青森」というイメージが相当に定着してきている。
その青森県産ニンニクの場合、収穫は6~7月で、これを貯蔵したものを年間を通じて市況に合わせて出荷している。つまり、今、8月というのは青森県産の新物の時期ということで、これから秋から春にかけては青森県産が量的にやや優勢という時期になる。
ちなみに、一度に収穫したニンニクを小出しに出荷すると聞くと、ニンニクは日持ちするのかと思ってしまう。なにしろ、買って来たニンニクを家庭でしばらく置いておくと、やがて全体が軟らかくなり、先端から青い芽が出て来てあわてて使い切るということがある。それと同じことが倉庫では起こらないのだろうか。
実は、倉庫に仕掛けがある。まず、庫内を低温にすること。そして、CA貯蔵というのだが、倉庫内の酸素濃度を低くするなどして作物の活動を抑制する貯蔵方法を採る。少々専門的ながらCAとはなんぞやと気になる方もいると思うので説明すると、CAはcontrolled atmosphereの略で、周りの空気の成分をコントロールすることを意味する。
青森県はリンゴの一大産地だが、実はリンゴでCA貯蔵を用いた管理・出荷のノウハウを蓄積してきた歴史がある。ニンニクの栽培に合った気候というだけでなく、こうしたビジネス面での“土地勘”も、青森県を“ニンニク県”にしたと言えそうだ。