ルパン三世の会話術 名ゼリフに見る「愛される理由」

歴代のテレビシリーズや劇場映画などの一挙配信が dTV で始まった

テレビアニメ「ルパン三世」シリーズが1971年の初放映から50周年を迎え、再び盛り上がっている。10月からは日本テレビ系で「ルパン三世 PART6」も始まった。粋な怪盗、ルパン三世(以下、ルパン)が主人公とあって、会話もしゃれている。憎めないキャラクターやウイットに富んだ語り口を印象づけるルパン流のしゃべりテクニック「ルパン話法」には、どんな特徴があるのだろうか。

「ルパン三世」はもともと青年向けの「漫画アクション」誌に連載されていたことからも分かる通り、大人っぽい漫画だ。原作者のモンキー・パンチ氏はアメリカンタッチの画風で、ピカレスクロマン(悪漢小説)ライクに仕上げた。だから、しゃべりがクールなのも当たり前の話。最初から子供向けではないのだ。

もっとも、テレビアニメ版は子供の視聴を意識して、ぐっと濃度を落としてある。でも、登場人物のハードボイルド的な雰囲気は保たれていて、せりふにも切れ味がある。テレビシリーズ版以外に劇場映画やテレビスペシャル版もあり、断続的ではありながら、半世紀も続くのは人気の高さを示している。

磨かれたせりふ回しも、人気の一因と思われる。たとえば、テレビ版の記念すべき第1シリーズ第1話「ルパンは燃えているか…?!」では、ルパンを裏切って窮地に追い込んだ峰不二子に向かって、エンディング近くでルパンはこう言う。

「裏切りは女のアクセサリーのようなもんさ。いちいち気にしてちゃ、女を愛せるわけがない」

ルパンは懐が深い。不二子はしょっちゅう裏切るのだが、こりる様子がない。むしろ、だまされるのを面白がっているかのようだ。大人の恋の駆け引きを楽しんでいるようでもあり、余裕を感じさせる。身につける「アクセサリー」を引き合いに出す見立てもしゃれている。

ルパンは不二子に限らず、仲間にも概して寛容だ。相棒のガンマン、次元大介や斬鉄剣の使い手、石川五ェ門にも一定の距離を置いていて、ウエットな関係を求めない。込み入った中身でも、ふざけたような口調でトーンを和らげるのが「ルパン話法」のよさ。語尾に「なあんちゃって」と言い添えて、重たいムードを逃がす。

ルパンには独特の口調がある。音を伸ばして、人なつこい印象を引き出す語り口だ。たとえば、文頭の「だから」を「だーから」、「さすが」を「さーすが」と伸ばすような言い方だ。「だーから、焦るなって」と次元をさとしたり、「さーすが、不二子ちゃん」とおだてたりするような場合に使う。

理路整然と説くのではなく、自分の考えを、ややほら話のように語ったり、自ら茶化したりするような口ぶりがルパンは得意だ。ルパンの勝手な行動に、次元と五ェ門が抵抗を示すケースはしばしばあり、そういった場合にルパンはリーダー風を吹かせず、なだめすかすために、こういったはぐらかし的な話法を用いる。

「~だもーん」「ちょーだい」といった、幼い響きの言葉遣いも、ルパンは好んで取り入れている。やや甘えた感じのニュアンスが生まれて、憎めない人柄のイメージが備わる。難易度は高めだが、仕事トークにうまく織り込めば、正面切っては申し入れにくい要望を、ふざけ気味にねじ込む話術に生かせる。

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おふざけとシリアスの使い分け
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