日経Gooday

答えと解説

正解は、(3)塩分が多い です。

予防栄養学のプロフェッショナルで、“冒険”病理学者としても知られる、京都大学名誉教授の家森幸男さんは、1985年、当時日本人の死因のトップを占めていた脳卒中の解明のために世界中を巡ってその食事内容と病気の関わりを解明する、という研究を開始。世界25カ国61地域を巡り、現地の人々の「24時間尿」の採取と採血によって栄養の摂取状況と循環器疾患のリスクとの関係を分析し、30年以上かけて数々のエビデンスを蓄積してきました。

その研究からわかったことの一つが、大豆のイソフラボン、魚介類のタウリン、いずれも摂取量が多い国(地域)ほど心筋梗塞の死亡率が低い、ということ。そして、「死亡率が最も低い」ところに日本がある、ということです。

さらに、家森さんは、世界中の人から集めた尿から、大豆はイソフラボン、魚介類はタウリンをマーカーとして、その量に応じてそれぞれ5分割し、25グループに分けて分析。その結果、「大豆も魚も一番多くとっているグループ」では、実に88.1%を日本人が占めることがわかりました。一方で、「大豆も魚も一番少ないグループ」には日本人はゼロでした。

「大豆と魚の摂取量が多いほど心筋梗塞の死亡率が低いこともわかったので、日本人の血管を若く保ち、冠動脈が詰まる突然死のリスクを防いでくれているのは、大豆と魚といってもいいと思います」と家森さん。日本人が日常的に食べている日本食、その日本食でよく使われる魚や大豆は、日本人の世界一の平均寿命を支えていると言っていいかもしれません。

24時間尿に含まれるイソフラボン、タウリンを測定した世界調査のうち、50地域の48~56歳の男女851人分(うち日本人は26.3%)のサンプルを大豆と魚介類の摂取量で5×5の25グループに分け、それぞれのグループに占める日本人の割合を調べた。その結果、大豆も魚も最も多くとるグループでは、88.1%を日本人が占めていた(PLoS One. 2017 Apr 21;12(4):e0176039.)

日本食、地中海食地域に共通する欠点は「食塩摂取量の多さ」

そんな日本食以外で、長寿食として知られる食事には地中海食がありますが、家森さんはその地中海食についても調べています。

実は、日本食と地中海食はともに長寿食として評価されていながら、両者を共通のモノサシで比較した研究はそれまで存在しませんでした。そこで、家森さんたちがこの2つの長寿食の栄養特性を24時間尿のデータをもとに分析したところ、共通する特性があることがわかったそうです。

なお、分析においては、日本食(日本の6カ所)と地中海食(地中海地域の6カ所)、そして比較対象として西欧食(アイルランド、スコットランド、スウェーデン、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)、合計18地域の健診結果を比較したそうです。その結果、わかったことは以下のことです。

・西欧食地域では、日本食や地中海食地域に比べて、血圧、総コレステロール値が明らかに高い

・日本食、地中海食地域では、海の幸に多いタウリンと、豆類、種実類、海藻などに多いマグネシウム摂取量が多い

タウリンが魚に含まれることは前述した通りですが、マグネシウムについては、日本人は大豆やゴマ、海藻などを多く食べており、地中海食地域ではクルミなどのナッツがよく食べられます。そのほか、緑黄色野菜や、精白されていない穀類などにもマグネシウムは含まれます。

もう一つ、家森さんたちの研究では、日本食と地中海食に共通する欠点もわかりました。

・日本食、地中海食地域は、どちらも食塩摂取量が多い

ということです。