パワーポイントは第一印象! 差をつける2つのポイント
いまいちパワポ改造計画
パワーポイントの資料作成に苦労していませんか? 伝えたいことが一目で伝わる資料を作るにはどうすればいいのでしょうか。シリーズ「いまいちパワポ改造計画」ではツイッターで7万人以上のフォロワーを集めている『パワポ芸人』ことトヨマネさんの監修のもと、架空のIT系会社員「今市くん」と「池照さん」の対話形式で資料作成のコツをお伝えします。

某IT企業で働く社会人3年目。やる気と元気には自信があるが、資料作成には苦手意識がある。

今市くんと同じ部署の先輩。わかりやすい資料に定評があり、部署内でも一目置かれている。
水曜日の朝。資料作成が苦手な今市くん、今日はいつもより元気そうです。
今市 ここはこうして……っと! うん、うん、いい感じだな。
池照 今市くん、おはよう。どうしたの? きょうは何だかご機嫌じゃない。
今市 池照さん! おはようございます。最近、何だか資料作成が得意になってきた気がしてるんですよ。来週の新入社員向けの会社説明会も、池照さんのおかげで乗り切れそうです。
池照 それはよかった! やっぱり、資料作成スキルの向上には実際に作るのが一番いいからね。どんどん実務に生かしてくれているようで何より。
今市 ほんとですよね。池照さんの教えを守って、ちゃんとフォントをMeiryoUIにそろえて、色も削って……見てください! こんな感じです。

池照 な、なるほど……確かにフォントはそろってるし、色もグレー基調でシンプルだね。
今市 そうですよね! 自分でも社員の年代や業種の構成、取引先をわかりやすくまとめられたと思っています。池照さんのおかげです!
池照 う、うん……ありがとう。でも、もうちょっと良くなるかな。ちょっと貸してくれる? 例えば私だったら、このスライドはこうするかな。

今市 これは……全然違うじゃないですか!! 僕のスライドに比べて、スッと頭に入ってくる感じがしますね。あんなスライドで満足していたのが恥ずかしくなってきた……。
大半の人はサラッとしか見ない
池照 今市くんのも全くダメってわけじゃないから、自信持って! 資料作成はインプットとアウトプットの繰り返しが大事。さて、きょうのポイントはこの2つよ。

今市 「区切り」と「ストーリー」ですか。
池照 そう。まずは区切りね。今市くん、突然だけど合コンは好き?
今市 ごっ、ご、ご、合コンですか!? まあ、呼ばれたら行きますけど得意ではないですね……合コンと資料に何か関係があるんですか?
池照 合コンでは、とにかく「第一印象が大事」って言うでしょ。結局、ぱっと見の身だしなみや立ち居振る舞いでその人の人となりって大体わかっちゃうし、実際のところそれがその人の全てだったりするのよ。
今市 あれ、この連載って恋愛コラムでしたっけ?
池照 で、それは資料も同じなの。例えば、今市くんが作った資料を縮小して、目を細めてボーっと見てみて。どういう風に見える?

今市 えっと……左側に表とグラフがあって、右側にテキストが書いてありますね。
池照 そう。それがこのスライドの第一印象。スライドを見る人って、ぶっちゃけこのくらいの印象でしかスライドを捉えていないのよ。
今市 そ、そんな! 課長なんか、いっつも眼鏡を外して隅から隅までじっくり読んでくれますよ!?
池照 まあ、実際はそういう場合も多いけどね。とにかく、大半の人はスライドをサラッとしか見ないと思っておいた方がいい。ぱっと見でざっくり全体像がつかめないと、しっかり読み込む前にあきらめちゃうのよ。
今市 そ、そんなぁ。せっかく頑張って作ったのに……。
スライドは「仕切りで区切られたお弁当」
池照 まあまあ、これはあくまで心構えの話だから(笑)。で、じゃあどうするかというと、スライドを「区切る」の。
今市 スライドを区切る?
池照 そう。今市くん、あのスライドを作る時、特に何も考えずグラフや表をスライドに並べただけでしょ。
今市 ま、まあそうですけど……。
池照 スライドに要素を置き始める前に、スライドをタテヨコに区切って、大まかに領域分けをするの。

池照 スライドは「真っ白なキャンバス」ではなく、むしろ「仕切りで区切られたお弁当」のようなもの。ある程度どこに何を置くか決めてから要素を置き始めると、ぱっと見で全体の構造がわかりやすいスライドが作れるの。

今市 なるほど! 確かに池照さんのスライドは3つの要素を並べて、そこから一つの結論が導かれるという構造がわかりやすいですね……あれ? でも、それで言うと僕のスライドも、4つの領域に区切られていることは比較的わかりやすくないですか?
池照 確かにね。でも、構造がわかりやすいということは、単に領域で区切られているというだけでは達成できないの。そこで大事なのが、2つ目のポイント「ストーリー」よ。
今市 なるほど、ここで2つ目のポイントが生きてくるんですね。
人間の視線はZで動く
池照 まず、今市くんのスライドをもう一度見てみましょう。これ、スライドの上をどういう流れで話が展開している?
今市 話の展開ですか? えっと……右上のメッセージが話の流れなので、こういう流れですかね。

池照 そうだよね。一方で、私のスライドはこう。

今市 確かにそうですけど、これがどうわかりやすさに関係するんですか?
池照 実は私たち人間は、横書きのものを読むとき自然とアルファベットのZを描くように視線を動かす癖があるの。

池照 だから、スライドの上に要素を配置する時は、これに合わせて、つまり左上から右下にかけて流れを作ってあげると違和感なく理解することができるのよ。
今市 な、なるほど! 確かに、ノートを読むときとかはこういう目の動きをしていますね。
池照 つまり、スライド1枚の中にもZのストーリーがあるということ。プレゼン全体のストーリーを考えるのは当たり前でも、意外とスライド1枚の中のストーリーのことは意識していない人が多い。

池照 でも相手にわかりやすく伝えるためには、プレゼン全体のストーリーと同じくらい、スライド1枚1枚の中にあるストーリーも大事なの。
今市 なるほど! スライド1枚にもZのストーリーがある。それだけでいいのか! よし、その考え方で資料を直してみます。僕にもできる気がしてきました!
池照 そうそう、その心意気。
今市 あれ、ところで池照さんの修正版は業種の説明に表じゃなくてグラフを使ってますよね? サラッと変えてますけど、今日はこの辺りの解説はなかったような……
池照 あ、バレた? まあ、ちょっとした一工夫もわかりやすさには大事ってことで。合コンもちょっとした気遣いが大事でしょ?
今市 結局そういうことになるんですね。次回の連載ではちゃんと解説してくださいよ!!

