名物の「中華そば」(770円)

「ヤキソバ」(825円)にしようかと迷ったが、やはりここは名物の「中華そば」(770円)で行くことにする。ニュー大衆酒場というからには、東京風のあっさり系ラーメンかと思いきや、さにあらず。テーブルにある丼はかなりの存在感で、スープは独特の茶色。そこに男性の手のひらを越えるような大判のチャーシューがのり、なぜか大ぶりのアサリが2つ入っている。

ラーメンフリークではないので、これがどこの系譜なのかまったく分からないが、大衆酒場ではまず見ないのも確かだ。というより大衆酒場でラーメンを出している店は、ごく限られている。

大判チャーシューが圧巻の「中華そば」

スープを口にすると、やや甘みを感じるしょうゆ風味。ご当地ラーメンのどこにもないような味わいで、脂もしっかり入っている。数少ない記憶をたどると、四国の徳島ラーメンに近いか。麺はやや幅広の縮れ麺だ。

いけない、いけない。ラーメン評論になってはいけない。酒飲みとしては、シメの一杯としてどうかを語らないと。

結論を言うと、合格点と言える。独特なスープは、胃を温めてくれるし、どこか記憶に残る味だ。好みの味を求めて2軒目を探すよりリーズナブルだ。長居できないときは、サワーやハイボールと「中華そば」一杯でも十分献立が成り立つ。

ポイントは、大判チャーシュー。おそらく低温調理を実施しているのだろう。一部に赤い部分が見えるが、じっとりジューシーで、かみ切りやすく、これだけ取り出してつまみに欲しいほど。店には「ライス」(275円)もあるから、これで「ラーメンライス」も作ることができる。

「手羽先黒胡椒」(649円)。これが意外にでかい

正直言うと、やや捉えどころがない店という印象も残るが、客はそこまで複雑には考えていないだろう。自分の都合で好きなものを好きなタイミングで食べるに違いない。「スタンド富士」を見ていると、コンセプトうんぬんより、うまい酒とうまい料理があれば十分だよなと気づかされる。

(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)

*遠山敏之さんは2021年末に急逝されました。謹んでお悔やみ申し上げます。本稿は遠山氏のご遺稿となりました。