変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

政府が個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じる方針を示すなど、国のリスキリング支援が拡充していることを受け、各自治体の2023年度予算には、新規事業として、企業や個人向けのリスキリング支援が豊富に盛り込まれた。

新年度を前に、NIKKEIリスキリングは、東京都、山形県、広島県などリスキリング支援に取り組む自治体に対し、新年度予算をもとに取材し、各地で始まる主な支援策をまとめた。自治体による無料のリスキリング講座や、リスキリングを進める企業への助成金などの支援策があるため、リスキリングに関心のある企業・個人は積極的に活用してほしい。

なお、支援内容は現時点の想定であり、今後、各自治体と委託業者との契約状況などにより、変わる場合もある。事業の詳細は4月以降に公表されることが予想されるため、気になる支援策があれば、こまめに自治体のホームページを確認してほしい。

1.個人向けリスキリング支援

まず、個人で利用できる事業を紹介する。無料で受けられる講座や、専門性が高く、業務に生かしやすい講座がある。

東京都は、人へのリスキリング支援を通じ、産業構造の変化に対応する人材を年間約2万人育成する「リスキリングプロジェクト」を実施する。とくに、新たに始まる女性とシニア向けの無料講座が目玉だ。

「女性向けキャリアチェンジ支援事業」では、非正規雇用で働く女性向けに、半年ほど、ワードやエクセルといったソフトやビジネス経理などのeラーニング講座を提供したり、受講者同士が就活の情報交換をできるコミュニティスペースを開設したりする。7月ごろに受講者を募集し、8月以降の講座開設をめざす。

「新たな時代のニーズに対応するためのシニアの再活躍応援講座」事業では、シニア世代がセカンドキャリアで新たな職場に適応できるよう、5日間の短期集中プログラムを提供する。時期は未定だが、2023年度中に6回開催される見込みだ。キャリアコンサルタントが再就職先で働く際の心がけを伝えたり、すでに再就職し働いているシニア世代が体験談を伝えたりする。

岐阜県では、県民向けに、ITパスポート受験のための無料講座をeラーニングで提供する。そのほか、県内製造業のデジタル化、DXを支援するため、県内の製造業で働く人や働きたい人約20人を対象に、AI、IoTといったデジタル技術、工場で使うデータの収集や分析を学ぶ講座も開設する。講座は、秋〜冬ごろまでの4か月ほどを想定している。

岩手県は、企業のDXを推進するため、「デジタルリスキリングプログラム」を始める。グーグルツールやスプレッドシートなどのデジタルツールを学ぶコース(4時間×3日間)と、自社で使う業務アプリを開発するコース(4日間×7日間)の2つを予定している。

いずれのコースも、県内の中小企業で働く従業員や個人事業主などを対象に、約15人が受講する講座を2回ずつ開催する。一部を除き、講座は無料。時期は6月以降を想定している。

県民それぞれのキャリアに応じたリスキリングのサポートをするのは茨城県だ。リスキリングに興味を持っている人が、これまでのスキルやキャリア、関心事項を入力すれば、その人に向いたスキルを紹介してくれる検索システムを作る。

2023年度後半には、県と教育機関が連携し、デジタル分野を中心としたリスキリング講座を提供することも検討している。

2.企業向けリスキリング支援

続いて、企業向けの支援を取り上げる。経営者や人事担当者が社内のリスキリングに取り組む際のポイントを学べるセミナーや、リスキリングを進める企業向け助成金などの支援がある。

2-1.経営者・人事担当者向けセミナー

広島県は、県内企業の経営者やリスキリング推進の担当者を対象に、10~12月ごろ、数日に分けて、リスキリングを企業で推進するためのポイントを伝える講座を開く。リスキリングの意義や経営戦略との連動性をはじめ、従業員のリスキリングのための時間確保や処遇といった労務管理まで教えることを想定している。

山形県は、県内企業の経営者や人事教育担当者向けに、リスキリングの重要性を啓発するセミナーを開催する。リスキリングについての啓発活動をしている有識者による基調講演や、リスキリングに取り組む県内企業による事例紹介を予定している。オンラインでも参加できる。

茨城県も、6月ごろと12月ごろの2回、県内企業の経営者などを対象に、リスキリングの理解を促進するワークショップを開催する。

2-2.リスキリングへの助成

広島県は、企業が厚生労働省の「人材開発支援助成金」を労働局に申請する業務を社会保険労務士などの外部専門家に委託する際の経費について、2分の1(上限25万円)を助成する。リスキリングに取り組むことを社内外に宣言する、県の「リスキリング推進宣言企業」となった場合は、補助率が5分の4(上限50万円)に上がる。

金沢市は、「ITパスポート」「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」の3つの試験について、従業員の受験料や講座の受講料を事業主が負担した場合、2分の1を助成する。受験料は3千円、受講料は「ITパスポート」「基本情報技術者試験」が1万円、「応用情報技術者試験」は2万円が上限となっている。 ITパスポートの助成は、29歳以下に限定している。

山形県では、人材開発支援助成金を受給する場合、研修・訓練の受講のための交通費・宿泊費を助成する。助成率など詳細は調整中だ。

2-3.従業員向けリスキリング講座

石川県は、金沢大学など県内の大学と協力し、デジタル分野の企業向け研修を実施する。

これまで開催してきた、早稲田大学などによるIoT/AI高度技術人材育成研修の中にも、最高デジタル責任者(CDO)育成講座、ローコード講座を新設する。

福岡県は、県内に半導体関連企業が400社ほどあることから、「福岡県半導体人材リスキリングセンター(仮称)」を開設する。これまでの「システム開発技術カレッジ」を改編する形で、大学の研究者や企業の技術者による「半導体基礎」「電気回路の基礎」といった半導体関連の講座を増やし、半導体企業の新人研修にも適した初級・入門講座を充実させる。当面、県内企業の従業員の受講料は無料とすることを想定している。

民間の研修企業が作成したリスキリング動画を無料で企業に提供する自治体もある。加賀市は、ネット上で視聴できるリスキリング動画を提供する民間企業と契約し、動画を見るためのアカウントを、無料で市内企業に提供する。

ライター 吉川真布(株式会社Linkard)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック