やりたいことを「どこで」するか
こうした伸びしろの企業を紹介することを通じて、著者が本書で最も言いたかったことの1つは、高い志をもって社会的な課題を解決する起業家が育ってほしいということであるように思われます。同じく起業家を育てる活動に取り組む、リクルート出身でゲーム会社のコロプラの副社長を務め同社を東証1部上場に導いた千葉功太郎氏との巻末の対談で、その思いが強く表れています。
その対談で、著者は千葉氏のこうした言葉を引き出しています。
千葉 投資家としての僕のスタンスは、おっしゃる通り「人」を見ることにあります。シード段階だけでなく、ミドル、レイターのステージであってもそうです。マザーズ上場レベルでさえ、仕組みで稼ぐほど会社は成熟しておらず、まだまだ創業社長や経営メンバーといった「人」なんだろうなと思っています。やっぱり創業者の底力とか胆力、夢というところに会社の成長がすごく引っ張られるんです。そして上場後、それをいかに仕組み化したり組織化したりしていくかに、企業の将来がかかっていく気がします。(192~193ページ)
(終章 「穴を見つけて穴を埋める」。成長企業は絶えず生まれ続ける 177ページ)
起業家の道を歩むもよし、今の職場で頑張り目標を達成するもよし。本書を読むと、最後は「人」という、高い志を持ったビジネスパーソンの活躍が「おいしいニッポン」を引き寄せる原動力となるように思えてなりません。
◆編集者のひとこと 日本経済新聞出版・酒井圭子
本書の企画が立ち上がったのは19年秋。当時の仮タイトルは『投資家が見通す2022年の社会』でした。
その後、ブレストを重ねる中で「3~5年後は読めないが、20年後は見通せる」という著者・藤野英人さんのご提案があり、急きょ「20年後のミライ本」にシフトチェンジしました。
悲観論が主流を占める昨今ですが、ここには「未来は明るい、未来は選択できる、未来はつくれる」という藤野さんの強いメッセージがこめられています。
ただし、それは「希望や努力の先によい未来があるというぼんやりとした確信を持ち、そこに向かってアクションする人」である必要があります。
明るい未来を味わうために、どんな考え方・行動をしていくのか――
投資やビジネスのヒントであることはもちろん、新しい生き方の示唆にあふれた元気の出る一冊です。